第21話
ママ、アール君と作業を分担させて、必要な分の傷薬ができた。ママは「行ってくるわね」と、急いでほうきに乗り傷薬を届けにいった。
それから一時間後。薬を届けて戻ってきたママから話をアール君と食卓で聞いた。
内容は――今日の早朝、鬼人族の人が山菜採りに夢中で、ミネルバ様の守りの結界を超えてしまい。都市の周りのシシリアの大森林から魔族の森――ムスゴに迷い込んだとのこと。
「ま、魔族の森に迷い込んだ?」
「それは厄介ですね」
「ええ、その鬼人族の人は気付き、何事も無く、ムスゴの森から戻れればよかったのだけど。――運悪く、鳥型モンスターに見つかってしまったの」
「「鳥型のモンスター!」」
ママが言うには――いまは産卵期で鳥型モンスターは卵を守る為に凶暴。
見つかった鬼人族の人がモンスターから逃げ切り、ミネルバ様の結界のなかに入れば、鳥型モンスターも追っては来られないはずだった。
しかし――その鳥型のモンスターはミネルバ様の結界を超え、シシリアの大森林の中を駆けめぐり、魔法都市の近くまで侵入した。
「それで、鬼人族の人は助かったの? と、鳥型のモンスターはどうなったの?」
「鬼人族の人は大丈夫よ。ミネルバ様は結界に触れたものがいると気付いたときから――獣人、竜人、魔法使い達の力を借りて探させていた。そして鳥型モンスターから逃げる鬼人を見つけ保護して、鳥型のモンスターを捕獲できたのどけど。鳥型のモンスターがかなり凶暴で、捕獲をするために多くの怪我人が出てしまった……エルバ、パパも参戦して怪我をしたの……」
――え、パパが怪我をした?
「パパは平気なの?」
「ええ、怪我は切り傷程度で、たいしたことがないのだけど……モンスターが侵入したことで。ほんの数十秒、ミネルバ様の結界に穴が空いてしまって……そこから入ってきた毒草の毒に侵された……」
「毒草の毒?」
「他にも数名、その毒で倒れたわ……」
「ママ、毒草なら解毒草があれば治るよね。今すぐ解毒薬を探さないと……その毒草の名前は?」
毒草の名前がわかれば博士に聞いて、その毒草を見つければ解毒草もわかるはず。
「ママ、その毒草の名前を教えて!」
と聞いたけど、ママは眉をひそめ首を横に振った。
「……それが、わからないの」
「え、わからない?」
ママの瞳に涙がたまり、体が震えている。
「エルバ……その毒草の名前も、解毒草も大魔女ミネルバ様でも、私達の力でもみつからない――けして見つけられないのよ」
「嫌だ! そんなの嘘だよ! 私がパパに会って直接聞いて、解毒草を見つけてくる!」
家を出ようとした私をママがとめた。
「……エルバ、待ちなさい! パパは魔法使いでもなく亜人族でもない……魔族なの。それも前魔王の側近をしていたわ」
ママの口から、衝撃的な事実が語られた……
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