第152話

「ママ、ごめんなさい……好奇心に負けました」

「あら、あら素直でいいですが、毒草を食べ過ぎないようにしなさい」


「はい! 気をつけます」

 

「良い返事ね。それと、サタ様とアール君は娘をしっかり見ていてくださいね」


 ママの鋭い瞳にビクッと体を硬直させる、サタ様とアール君。今回の2人はマズポーションにばかり気を取られていて、毒草が生える場所で私の監視をしていなかったのだ。


 ――まぁ食べちゃった、私が悪いのだけど。


「すまなかった……」

「すみません」


「素直でよろしい。私とミネルバは帰るけど――その魔女の手紙、エルバ達に任せてしまってもいいの?」


「いいよ。ヌルスケ君には魔女のことを伝えないといけないし。この森でタタメリックと、コリアンダダを探すから」


「タタメリックとコリアンダダ? ああ、それなら魔女にタネを少し貰ったわ。このタネ、エルバに渡す? それともエルサタ領に植える?」


 エルサタ領?


「ほお。領地の名前がエルサタ領か、よいな」


「ねぇ、いいでしょう。カルデアと魔法都市のみんなで考えたのですが、エルバちゃんはどう?」


「はい、いいです! エルサタ領いいと思います!」

「エルバ様とサタ様の名前がつく領地。とてもよいと思います」


 サタ様とアール君、私の賛成でエルサタ領に決定した。博士から貰ったタネはエルバの畑に植えれないので。

 魔女さんのタタメリックとコリアンダダのタネは、ママに領地の畑へ植えてもらうことにした。




 ママとミネルバ様を送り、私達はヌルスケ君がいる湖に戻った。


「ヌルスケ君、ヌルスケ君!」

「はぁ~い、ヌルスケぬら~みなさんお帰りなさい。魔女さんに会えましたか?」


 今から、ヌルスケ君に魔女のことを見えなくてはならない。友達だったみたいだから……ヌルスケ君、悲しむだろうな。なかなか私が言い出せないでいると、サタ様が伝える。


「魔女は天に昇った。そして、魔女が住んでいた家にヌルスケに宛てた手紙が残っていた」


 私はヌルスケ君に魔女からの手紙を見せる。ヌルスケ君はその手紙を見て、魔女との思い出が蘇ったのかヌルスケ君は涙をながした。


「ぬら……魔女さんはいってしまったぬら……寂しいけど、またどこかで会えるぬら。その魔女さんの手紙読んで欲しいぬら」


 私は手紙を開きヌルスケ君に読む。初めての出会いから、今までのヌルスケ君との楽しいことが書かれていた。そして最後にありがとうと、ヌルスケ君に会えてよかったと書いてあった。


「ボク、300年前――魔王サタナス様がこの世界から消えて寂しかったぬら。悲しくて、寂しくて、この湖で泣き続けるボクのところに魔女さんが「うるさい」と現れて。うるさいと言いながらも、泣くボクを勇気づけてくれたぬら。ボクが冒険者に狙われないよう、毒草も撒いてくれた。たくさんの面白い魔法と話、ボク、魔女さんに会えてよかったぬら、魔女さんおやすみ」


 ヌルスケ君は空に向けて手を振った。

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