第164話

 新しくスパイスで作ってみた、ポーションを味見したが、甘みと辛味のない薄いカレー水? の味がした。


 う〜ん。


「……前のよりも、飲めなくはないが。まだ味が微妙だし、何か足らない気がする」


 ――ここに塩コショウとか、果物を入れてみる? それも、カレーのシュワシュワにしてしまう! いやいや、血迷うな私。




 テントの中で出来たポーションを見つめながら、付け加える味を考えていた。ガサッとテントの入り口が空き、モコ鳥のサタ様が覗いた。

 

「エルバ、テントの外まで何やらいい匂いがするが。何を作っているんだ」


「え、ポーションだけど、飲む?」


 一瞬、眉をひそめたが。鍋の中の液体を見せると、クンクンと鼻を鳴らした。

 

「これがポーションだと⁉︎ ワタシの知っているポーションは青臭い匂いだ、こんな美味しそうな匂いはしない!」


 サタ様には驚きの匂いだったのか、瞳が大きくなった。


「味はまあまあだけど、少し飲んでみる?」

「飲む!」


 即答だった。


 


 コップに少しだけ入れて渡すと、器用に羽でコップを持ちポーションを飲んだとたん、サタ様の体がピカッと光る。


 ――まぶしい⁉︎


「こっちの方が断然と美味いし、ワタシの古傷が消えて、魔力が全回復した……効き目が凄いな」


「そんなにすごいの?」


「ああ、元々ポーションは人用に作られているものだから、我々魔族は一本では全く回復しない。だからマズイポーションを飲む羽目になる」


「あれを何本も!」

「エルバも気付いたのか」


 私はコクコクうなずく。はじめに作ったポーションの味を思い出して、私は口元を抑えた。あれは苦くて美味しくない、それを何本も飲むのは苦痛だ。


「1本飲むのも、何本も無理だよ〜」

 

「そうだな。でも、このポーションなら一本いや、少しの量で済むな」


 そうかも。このポーションは神様からの謝罪で貰った、エルバの畑から収穫したククミン、タタメリック、コリアンダダで作ったポーションだから効き目は抜群だ。


「効き目が良すぎるし、前よりも飲みやすい。他のモノが知ればポーションを欲しがる」


「この、ポーションを欲しがる?」


「ああ、そして効き目を知れば。作ったエルバを探し始めるだろう。なにせ、このポーションは多額の金を生む」


「このポーションが、多額のお金を生む?」


 サタ様の言葉にゾッとした。――私は異世界のいろんな植物、薬草を発見したいだけ、それ以上はなにも求めていない。知られるのだってパパとママ、サタ様、アール君――魔法都市のみんなと、領地のみんな以外には教えたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る