第107話

 冒険者ギルドの応接間のソファーで、しばらく待つように言われた。その間、サタ様とアール君とで念話で話していた。


〈ギルドボードに、カルア草のクエストが貼られていたのか〉

 

〈うん、それでギルドで聞いたら驚かれちゃって、ここに案内されたの〉


〈おかしいですね。冒険者ギルドの職員が毒草を、知らないことはないと思われますが……〉


 アール君の言う通りかも、だったら何かを試すために貼っていたとか? 私が余計な事をしてしまった予感がした。


 コンコンコンとノックの後、応接間の扉が開き。

 ベストとシャツ、スラックスの白髪混じりの短髪の、おじさんと、さっきの受付のお姉さんが入って来た。


〈うむ。人間にしてはガタイがいいな〉

〈はい、Sランクの冒険者だったようです〉


 すかさず、おじさんのスキルチェックをしている2人。だけど、自分達よりも力の差があったのか……すぐに興味をなくした。


 目の前のソファーにドカッと座った、おじさんはクエストの紙を見せて。


「さて、君がこのクエストに書いてある――カルア草が毒草だと見抜いたのか?」


 私が「はい」と話すより先に、お姉さんが話した。


「はい。ここ王都では珍しいFランクの冒険者です。Fランクの冒険者と言えば――王都のギルドより街にある支店ギルドに多くいます。ここはSランクからBランクが多いんです、この冒険者ギルドにいる自体珍しい」


〈ん? 今軽く、デスられた?〉

〈Fランクは街の冒険者ギルドでクエストでも、受けとけと言ったようだな〉

〈面白い事を言いますね……エルバ様、気にするだけ疲れますよ〉


 そうだけど……ギルドカードを持つ冒険者はどこのギルドでも、クエストが受けるはずなのに。ランクが高い冒険者しかいないみたいな事を言うなんて、見下しすぎだ。


 こんな態度だからランクの低い冒険者は。

 バカにされる王都の冒険者ギルドより、街の支店ギルドに行くんだよ。


 そんなんだと、育つ芽を積んじゃうぞ!


「あんまりひどい事を言うな、といつも注意しているだろう! これはすごい事だぞ」


「そうですが、ギルドマスター! ギルドの質が落ちます!」


「質? なんだそれは! 冒険者はランクが低かろうが高かろうが冒険者だ! お前達のその態度が、低ランクの冒険者を遠ざけているんだ!」


 おじさん――ギルドマスターの剣幕に圧倒されるお姉さん。だけど、あまり効果がないみたいで、ツンとそっぽを向いた。


「すまんな……だが、よく毒草のクエストだと見抜いたな。これはひと月に一回行っている、AランクからBランクあたりの試験なんだ」


「し、試験ですか……」


「そうよ。低ランクのあなたが台無しにしたわ」

 

「おいおい、落ち着け。最近の冒険者は採取クエストを軽く見ていたな。薬草にあまり詳しくない……よく薬草と毒草を見間違えて採取してくる。それでな毒草のクエストを貼って、見抜けるのか試験をしている」


〈うむ。ランクの高い冒険者が討伐の片手間に、採取クエストを気軽に受けるからだな〉


〈報酬関係で、採取クエストだけを生業にしている、冒険家が減ったのかもしれませんね〉


〈ええ! 採取、面白いのに〉


 でも試験ならよかった。もしかしたら、カルア草のクエストの依頼主が……一瞬、アマリアさんで。毒草だと知らずに、クエストを貼っているのかと思った。


 キキさんに会ったばかりで、過剰に反応して、余計なことをしてしまった。

 

 まあ、カルア草は特殊指定クエみたいだし。あの子は黒魔術をかじっていたみたいだから……自分で集めるか、何処かで栽培してそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る