第113話
いきなり雄叫びをあげて、消えたパワー様に唖然とするも、クラーケンを追い返したと喜ぶ冒険者と生徒達。その中にアマリアさんはいたが。モサモサ、グルナと新魔王ローザンの姿はなかった。
(2人も来ているはずなのに……)
不思議に思いながら、マーレ港街の西の離れに移動して、パワー様をサタ様達と待っていた。
[サタナス、待たせたな]
私達の前に現れたパワー様はスイカより大きく、液体の入ったガラスの球体の中に小さなタコの姿で、プカプカと空に浮いていた。それを見たサタ様とアール君は瞳を大きくした。
「な、なんだそれは? それが、今のパワーのリラックモードか?」
「数年前に見た……人型ではないのですね」
[ああ、リラックスと言っても、人型になるのは疲れるのでな。海の中で暇を持て余しておって、新たなリラックモードを編み出したのだよ。どうだ? この姿ならズッと陸におれる]
と、球体に入った小タコのパワー様が、プカプカ浮いている。それをウンウンとサタ様は見つめ。
「さすがだ、パワー」
[まあ……余のライバルのサタナスがいなくなって、余は海に中で何もする事なく、仲間を見守り過ごしておった……だが、長生きはするものだな。もう一度会えて嬉しいぞ]
黒モコ鳥と、小タコが嬉しそうに見つめ合ってい、アール君は2人を見て瞳に涙を浮かべていた。凄いな……パパ達、アウトラム家族、ワイルドポポのゲンさん……ラッテさん。サタ様はこんなにも、みんなに好かれている。
――少しやける、羨ましい。
「パワー、ワタシもおぬしに会えて嬉しい。これもエルバが、ワタシを見つけてくれたおかげだな」
[何、このお嬢がサタナスを見つけた? 勇者と戦いサタナスの気が消えた……やられたと聞いたが?]
「表向きはそうだな。だが、ワタシは倒れたのではなく……変な人間に捕まった」
[そうであったか。そのサタナスをお嬢が見つけたのか。……そうか、そうであったのか。数ヶ月前から何やら強い力を感じていてな。数100年ぶりに海から顔を出したが、余の住処の辺りが様変わりしていて驚いた。人間達を驚かせたお詫びに、余の足を差し出したのだが……なにか喚いておったな]
「クク。パワーと人間の言葉はお互いに通じておらず、アレは面白かったぞ」
[ハッハハ、その様だな……余の足は、魔法ですぐ再生できるので、気にはしておらぬのだが。せっかく差しだしたのだ、食して欲しいものだが……]
「パワー、それは難しいかもな」
「そうですね。人間はどちらかというと、臆病ですから」
そうか、と。パワー様は少しがっかりしているみたい。
だけども、私は少し気に乗るけど、し食べてみたいかも。タコと言えば――タコさし、タコの唐揚げ、酢ダコ、タコ飯。たこ焼きは……焼く鉄板がないから無理だけど、お好み焼きにすればいける!
グウゥゥ~。
タコ料理を考えていたら、サタ様達に聞こえるくらい、大きなお腹が鳴った。
「パワー、エルバが食べたいみたいだ。あの足、ワタシたちが貰うぞ」
「ボクも食べてみたいです」
「アール君⁉︎ 猫はタコを食べちゃダメだよ」
前世、猫が飼いたくて、本で読んだことがある。
猫に生のタコはダメ。茹でタコも硬いから、ダメなのだけど……あ、でも、アール君は魔族だから平気?
「フフ。エルバ様、ボクは見た目は猫ですが魔獣ですので、基本なんでも食べれます。心配してくださったんですね」
「ワタシも平気だ」
[余は食べぬが。他の食べ物はなんでも食すぞ]
よかった……みんなで、パワー様の立派な足を回収しようと決めた。
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