第52話

 やっぱり、2人に黙って入れなくて、ライト草とツーン草の事を話した。サタ様はあっけらかんと『なんだ、そのことか』とアール君には『わかっております』と言われ、どうやら物凄く顔に出ていたらしく、私は隠し事ができないようだ。


「それで、みんなの意見も聞いてライト草とツーン草の調理法を考えたい」

 

「うむ、まかせろ」

「ええ、一緒に悩みましょう」


 3人で書庫で調べ、パパとママにも相談して実験を始めた。ライト草の花びらをかじると甘く、茎の部分は苦い。

 ママと話してライト草の薄いピンク色をした、花びらだけを使ってジャムを作ることにした。


「エルバ、弱火でゆっくり煮込むの」

「わかった」


 ライト草の花びらは元々甘いから砂糖を入れず、弱火で時間をかけて煮込み出来た花ジャム。薄ピンクな花びらだったからか、ほんのりピンク色のジャムができた。


「ライト草の花が入った、ジャム可愛い」

「ほんのりピンクがいいわね」


 もうひとつの、ツーン草はかじるとハッカに似た味がしたので。細かく刻んでソーマの森でとれた黒バチの蜂蜜と、魔法水を入れて鍋で煮込み、型に流して冷やし飴に。


「ライト草の花ジャム、ツーン草の飴の完成! みんなで試食しよう!」


「「おー!!」」


 おやつにホットケーキを焼き、出来たばかりのライト草の花ジャムをたっぷりかけた。


「甘くて美味しい、ライト草の花の香りに癒される」


「密のように甘く、濃い味わい……これは最高のジャムです」


「うまいな、ライト草のジャムを食べると他のでは物足りなくなりそうだ」


 サタ様、アール君に大好評で、パパとママにも食べてもらい高評価。ツーン草の飴はスーッとして気分をスッキリさせてくれた。


 


 次の日、朝一番。


「「なんだ、これはぁ?」」


 叫んだのはパパ。


 ママとみんなは声がした洗面所に集まる。その洗面所にはいつも櫛も通さない、剛毛な髪質のパパの髪がサラサラ艶々になっていた。

  

 それを見た途端、ママはパパに飛びついた。


「きゃっ、あなたステキ!」

 

「コラッ、エルバが見てるし、サタナス様とアール君もいるんだぞ。嬉しいが……2人きりのときにしてくれ!」


 ――慌てるパパと、くっ付いて離れないママ。仲が良くていい!


 それに、いつもゴワゴワ髪と強面でいかつく見えるパパだけど、髪質が変わるだけでイケメンにみえる。ママもそんなパパに頬を染めて可愛い。

 いつまでも仲の良いパパとママ見ている私とアール君に、サタ様は『あまり見るな、2人きりにしてやれ』と言われ、洗面所から連れ出された。


《エルバ様、お知らせいたします。ライト草の第2の効能が判明いたしました。どんな髪質もサラサラ艶々、髪質改善》


 ――隠し効能が髪質改善⁉︎


 どうりで、パパだけじゃなく。サタ様とアール君の毛がモフモフふわふわを通り越して、サラサラで艶々の毛になっていて、2人が歩くたびになびく毛は嫌だ……サタ様とアール君はモフモフ、ふかふかしか認めない。


 アール君はモフっと、サタ様はモコっとしてるのが可愛いのに、今日の2人の表情がいつもと違って見えた。

 その、ライト草のサラサラ艶々の効果は1日みたいで。

 次の日、パパ、サタ様、アール君は元の髪質と毛に戻っていた。


「パパは、どんなパパでも素敵」

「ママ!」


 ――ママはどっちのパパも好きみたい。よかった、サタ様とアール君がモフモフのモコモコに戻ってと、ホッとした。


 だけど、花ジャムを食べるだけで髪質が変わるなんて。髪用の石けんにライト草の花びらを練り込めば、花の香りも楽しめて、みんなの髪がサラサラ、艶々になるのか――これは面白いんじゃない。


 もう一つのツーン草は?


《ツーン草、第2の効能が判明しました。イライラもこれで解消、ストレス解消効果バツグン!》


 おお――ツーン草は肩こり、腰痛にも効くシップにもなって、ストレス解消の飴にもなる『スースー飴』と名付けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る