第二章 第79話 冒険の始まり?

 カラス達とヌヌを見送った朝食後。

 まだ寝足りない私達はテントに戻り、フカフカベッドで二度寝した。


 ぐっすり眠ってスッキリ目が覚めて、今日から楽しい冒険の始まる。


「おはよう!」


 と、元気よくテントの外に出たら……どっぷり日が暮れていた。


(あちゃ……冒険初日に寝過ぎた)

 

 王都に入るまで入った後も色々あった。

 サタ様の仲間、ヌヌを助けて気が抜けたみたいだ。私より先に目が覚めてお腹の減ったサタ様達はいつもの通り、私のマジックバッグを漁り……あたりに道具をちらしていた。


 うん、いつものこと。


「エルバ、起きたのか? おはよう」

「おはようございます、エルバ様」


「おはよう、もう夕方だね……ごめん、寝過ぎちゃった」

 

 原っぱのいつもの場所で焚き火をするサタ様とアール君。彼らも起きたばかりなのだろう、寝癖がひどい。


「フフ、心配するな、ワタシ達も今起きたばかりだ」

「はい、よく寝ました」


「それで、エルバより先に目が覚めて腹が減ったから、マジックバッグの中にあった、ジャロ芋を焚き火で焼かせてもらった」

 

「はい、ジャロ芋はとても美味しいです」


 2人はエルバの畑で採取できないから。何かあった時のため、いくつか野菜を畑で採って、マジックバッグにしまっている。


(昨日、ジャロ芋をたくさん採ってしまっておいて、よかった……かも)

 

 もし、なかったら今朝のように、彼らに起おこされていただろう。


 サタ様は『エルバも食べるだろう』と、焚き火から耐熱グローブで取り出した真っ暗なジャロ芋を、そのまま私に手渡そうとしきた。

 それぜったいに熱いと思うし、よく羽の手に耐熱グローブをはめれたよ。


(もしかして手だけ? ……考えるのよそう、なんだか怖いし)

 

「エルバ、どうした? 美味いぞ」


「ジャロ芋が美味しいのは分かってる……サタ様は耐熱性グローブで熱くないだろうけど、私はぜったいに熱いと思います」


「おお、そうだったな」

 

 サタ様から耐熱グローブの片方を貰い、ジャロ芋の焦げを取ってかじった。


「んん!」


 本来、素焼きをするなら。水分の少ない根菜は濡れたキッチンペーパーに包んで、水を含ませた新聞を巻き、アルミホイルに巻いて焼くのが一般。


 この直火焼きのシャロ芋は焦げているけど、塩、胡椒、醤油で味付けされていて、ホクホクしていた。


「美味しい、ここにバターがあれば完璧だね」


「バターとはなんだ?」

「なんでしょう?」


 もこ鳥と黒猫は首を傾げた。


 しまった……私だってバターはスーパーでしか売っている所しか見たことがない。まえ、コムギンを見つけたときにクリームシチューが食べたいと思ったけど、バターと牛乳がなくて諦めたのだった。


「エルバが言った、バターとはなんだ?」


 グイグイ、くるサタ様。


「……えーっと」


(あ、そういや前世テレビで? ネコチューバ? で、瓶に牛乳を入れて振っていなかったけ?)


「う、牛の生乳を密封できる瓶に入れて、振ればバターが出来たはず……」


「「おー!!」」


 適当で、簡単な私の説明を聞いて、目を光らせた2人。

 

 だけど、この異世界に牛っているのだろうか?

 魔法都市では多分、見なかったけど。


「エルバ、牛とはどんな生き物だ?」

「ええ、わかりませんね」


 2人は知らないみたいなので、足元に落ちていた枝をひろい、地面に牛の絵を描いた。それを見たサタ様とアール君はしばらく考える。


「それが牛というのなら『モンスターのアウドラム』に似ているな……確か、そんな形をしていた」


「ええ、アウドラムは僕もみたことがあります。大きさが五メートルから十メートルでしたか? 大型のモンスターでしたよね」


「うむ、そうだったな」


 五メートルから十メートルもある牛のモンスター?

 その大きさで、乳搾りできる?

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