第80話

「今は何処にいるかはわからないが……案外、ワタシ達の近くにアウドラムはいるかもな」


「いるかもしれませんね」


 日も暮れて冒険は明日にして寝ようと、私達は夕食を終えた後テントに移動した。今日のお風呂は前から入ってみたかった、猫足バスタブを思いっきり想像して成功した。


 可愛い見た目のお風呂に満足してベッドに戻ると、サタ様に話があると、ベッドへと呼ばれた。


「話って何?」


 それは、さっき外で話した牛――アウドラムの話みたいだ。


「エルバ、アウドラムの姿が大きいのは……その、魔王の時に私が面白がったのと……ワタシを喜ばせようとした、魔法使い、魔女、魔族の研究者達が競い合ったからなんだ」


「そうですね、ドンドン体が大きくなるアウドラムは面白かったです。乳が滝のように流れました」


「乳が? へぇ……」

 

 今から300年前はサタ様の魔族国も大きく、10メートルの大きさの牛――アウドラムも普通に野原を歩いていたそうだ。でも、それは魔王サタナス様がいなくなる前の話。


 

『『勇者様が魔王サタナスを倒した!!』』

 


 勇者が魔王を倒したと勢いついた、人間達は領土を大きくしようと、魔族達の次から次と土地を奪っていった。

 主君の魔王がいなくなった魔族達は住処を変えて、今の場所に魔族の国を作った。


 しかし、のんびり寝ていた。

 人間よって滅ぼされた、捕まった。

 魔族の全ては、今の魔族国に移動できないでいた。


(アウドラムも大きさゆえ、移動できなかったのかな?)


 残った魔族達が人から逃げる為に洞窟を掘ったり、地下を作ったりした。そして、自分を守る魔物を引き寄せ、時を得て、ダンジョンに変わったと言われている。


 そして、人間が元からいた魔族、魔物を勝手に恐れ、生贄、祭り事をされえいるドラゴン達も、人の国に取り残されたと言ってもいいのだそうだ。


 彼らは、ただこの土地を住処にしていたに過ぎない。


 魔族の大半は争い事を好まないものが多いと、サタ様は話した。

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