第78話

「…………ミズ」

「?」

「…………レット」

「??」


 明け方。


 カラス達の魔法水くれと。

 サタ様とアール君の『ガレットが食べたい!』の第一声で起こされた。


 昨夜、サタ様に枕をぶつけた後、カラス達も枕投げに参戦して、彼らから突き攻撃、突進されて、負けずに枕を投げ、投げられ……寝たのはほんのさっき。

 


 みんな元気だなと思いつつ『ふわぁい』と返事を返して……テントの外で顔と手を洗って。

 エルバの畑を開き、ジャロ芋とシュワシュワの実、野菜を採取した。

 朝食のメニューはみんなが気に入ったジャロ芋のガレット、コロ鳥の卵が残ってたからスープと、レタススで簡単サラダを作る予定。



 私の側で、焚き火を準備するサタ様とアール君、ヌヌ。



「エルバ、エダマメマメの塩茹も欲しい」

「サタ様がそういうと思って、今作ってるよ」


「僕はウメメのシュワシュワがいいです」

「ボクはなんでも食べるよぉ~」


「はいはい」


 じゃ、私はナッスンとピピーマンの甘辛炒めも食べたいと、もう一度畑を開き採取して、コメをメスティンで3合炊いた。



 朝食を始める前に、カラス達に大好物の魔法水をあげて。アイテムボックスからテーブルを出して、出来上がったジャロ芋ガレット、スープ、サラダを並べる。

 いつもと変わり映えしないけど、これが私達の冒険者初日の朝食になる。

 


「「いただきまーす!」」

 


 と、みんなでテーブルを囲み食事が始まった。


 私はシェラカップにコメを山盛りにして、ナッスンとピピーマンから。


「うまっ、ナッスンとピピーマンの甘辛炒め美味しい!! これはコメが進む!」


「エルバ様、ジャロ芋のガレット美味しいです」

 

「ガレットもいいが、ナッスンとピピーマン美味い、ワタシにもコメをくれ!」


「みんなで食べるご飯美味しいぃ〜!!」


「ウマイ」「サイコウ」「シアワセ」


 みんなでモリモリ朝食をとった。

 その食事が終わると、博士が教えてくれる。


《疲労回復いたしました、ビタミン、腸内環境を整えました》




 満足な朝食の後、ヌヌはカラス達と一緒に魔法都市に向かう。だから、昨夜のうちにフクロウ便で両親に手紙を送った。


 その手紙がさっき戻ってきた。


 ヌヌ達が魔法都市サングリアに着いたら、ママがカラス達に魔法水をあげてくれて、パパがヌヌの住む場所を用意してくれると書いてある。


 後、鬼人さんに借りたお金の事と、しばらく冒険に出たいと手紙に書いた。ママとパパから『サタ様とアール君がいるから、しばらくなら冒険に出てもいい、危ない事はしないように!』と、許可を貰った。

 

 鬼人さんに借りたお金は魔法都市に戻った時、自分達で返すと伝えた。ママとパパはそれなら、彼らにお礼の手紙と魔道具を贈ると書いてあった。


「サタ様、アール君、ママとパパがカラス達に魔法水と、ヌヌの住む場所を見つけてくれて、鬼人さんへのお礼の品も送ってくれるって……冒険はサタ様とアール君がいるから、しばらく出てもいいって許可を貰ったよ」

 

「エルバ様、それは良かったですね」

「そうだな、エルバ、アール、たくさん冒険しような!」

 


「「はい!!」」


 


 ❀


 


 一時間後、ヌヌとカラス達が魔法都市に向かう。


「サタ様、アール君、エルバ様、またね!」

「マタ」「カエル」「イクゾ」

 

「ヌヌ、カラス君達またね!」

「また、会おう!」

「寄り道せずに帰るのですよ」


 ヌヌ君を見送り、片付けが終わったらマサンの冒険者ギルドに向かい、討伐と採取のクエストを受ける予定。


「そうだ、サタ様、アール君、冒険者って1番上がS級なの?」


「そうだな、S級からランクが始まり――そこからA、B、C、D、E、Fになっている。ワタシ達は誰でもなれるFランクの冒険者だな」


「もし、森でランク以上のモンスター狩ってしまったら、どうなる?」


「ん? ……他の冒険者に見つからなければ、狩っても大丈夫だろう」


 やっぱ、上のランクの冒険者に見つかっちゃダメなんだ。となると、私もランク上の薬草を見つけたら、周りに気をつけよう。


「まあ、見つかったらみつかったで、別の国に移動すればいい。ワタシは狩が存分に楽しめれば良いし、エルバはママさんから転移魔法の紙を貰ったであろう? ワタシも魔力が有れば転移魔法は使える」


 ――転移魔法か。


「そっか、魔法都市に帰りたくなったら直ぐに帰れる」


「そういう事だ。ワタシもかなり魔力を使うがエルバの家の庭になら、この原っぱにならすぐ帰れる。……だが、キキの場所となると難しいな。あの王都の各所には勇者の力が散りばめられているし、中央の勇者の像にも『なんらかの魔力』が宿っていた」


(だから、サタ様は近寄らなかったんだ)


「私も新しい薬草、植物を見つけられたら場所はどこでもいいかな」


「僕は2人と冒険を楽しみたいです。さあ、クエストを受けに行きましょう!」


 この日から、私達の冒険の旅が始まった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る