第92話
「「うわぁ! 突風だぁ!!」」
ワイルドポポーに怯えていた冒険者パーティーは、いきなり吹いた風に3人とも腰を抜かしていた。
「な、なに? 今の突風は?」
「わかんないよ! ……や、やっぱり他の冒険者が言う通り、この森……呪われているんだよ」
「そうよ、冒険者ギルドの受付が言っていたじゃない……このチリの森にいたS級のモンスターコーブラとアウドラムが……忽然(こつぜん)と消えたって」
「そ、そ、そうだな……だから水辺に生息するはずの、こんなバカでかい……希少種のポポーがチリの森にいるのか!」
「「ヒィー!!」」
彼らは震えながら、アウドラムのママくらいの大きさの、ワイルドポポーを見上げた。
いま、突風が吹いたって?
まさか、アール君いつの間にか姿消してる?
彼は咄嗟に姿消しの魔法を使い、冒険者パーティーに姿を見せないようにして……猫パンチを繰り出しているが。
微動だにしないワイルドポポー。
[クッ、ここで会ったが100年以上目! ワイルドポポーの"ゲンさん"のお肉を頂戴します!]
[ふふ、いつぞやの小僧か……甘いなぁ! そう簡単にワシの肉は食わせん!]
アール君にゲンさんと呼ばれたワイルドポポーは、アール君の姿が消えているらしく。再度、飛びかかってきた彼に体当たりをした。
ドゴーーン!
[おお――!! ゲンさん強すぎま~す!]
[あ、アール君⁉︎]
彼は星になった……じゃなくて、チリの森のどこかへと綺麗に飛ばされていった。
[大丈夫? アール君!]
[エルバ様、ボクは大丈夫です。……ふうっ、ゲンさんにまた……負けてしまいました]
[うん、見事な完敗だね]
[はい、見事な完敗です]
フワフワと、肩を落とし飛んで戻ってきた。
いきなり動いたワイルドポポーに、震え上がっていた冒険者パーティーは逃げたらしく、姿が見えなくなっていた。
――冒険者ギルドに報告に行ったのかな?
アール君をじっくり見て、ワイルドポポーは笑った。
[ハハ、なんだ。度胸がある冒険者だと思ったが……サタナス魔王の側近のメガネ小僧じゃないか!]
[メガネ小僧、ゲンさん……ボクはサタナス様の執事ですよ。何度言ったらおぼえるんですか?]
アール君は立ち上がり、猫の姿のままメガネを直すフリをした。
[ガハハハ、どっちも同じじゃないか! それで、その執事がなんで、こんなところにいるんだ? もしや、コーブラとアウドラムが消えた理由を知っているのか?]
アール君は頷き。
[えぇ、知っておりますよ。しかし、ここてはなんですから原っぽに移動しますか? エルバ様]
[そうだね。いま逃げていった冒険者がギルドに伝えたら、ここに冒険者が来るかもしれないからね]
アール君の転移魔法で原っぱまで移動した――けど、アール君はサタ様より転移魔法が苦手らしい。突然、空中に現れ、可憐に着地したアール君とゲンさん……私はバランスを崩して地面に尻餅を打った。
「イテテ、お尻が……」
「エルバ様、すみません」
「大丈夫だよ……ゲンさんにコーブラとアウドラムの話と、サタ様の話をしよう」
「はい」
私は姿消しのローブを羽織り、アール君に姿消しの魔法を使ってもらい、ゲンさんの姿を他の人には見えなくしてもらった。
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