第93話

 朝、アール君と出発した原っぱに、チリの森で出会ったゲンさんと戻り、姿を消して話をしていた。


「いまのボクの名前はアール、この方は主人のエルバ様です。サタ様のご主人でもあります」


「サタ様? もしや、サタナス様の事か?」

「えぇ、そうです」


 アール君が、ゲンさんにサタ様の話をすると。


「な、な、なにぃ! サタナス様が生きている⁉︎ それは誠か……300年前、忽然(こつぜん)と消えてしまったサタナス様が……生きていらっしゃる」


 パパと同じくゲンさんもブワッと豪快に涙を流して、サタ様が生きていると知って喜んだ。次にアール君はゲンさんに、どうしてチリの森にいたのかを聞いた。


「どうしてかって……」


 ゲンさんの話ではアウドラムの家族と仲が良く、ちょくちょく会いにいっていたらしい。彼らの天敵コーブラがいなくなったと、魔物達の話を聞き。何かあったのかと会いにきたら、先ほどの冒険者と出会ったと話した。


「そうだっのですね。コーブラはボクとサタ様で倒しまして、アウドラムの家族はサタ様がエルバ様の故郷――魔法都市に連れて行きました」


「おお、そうでありましたか……よかった、彼らに何もなくて。それで、サタナス様はいつお戻りになられますか?」


「3日ほどで戻ると連絡がありました」


 彼らの側で、三角座りをして大人しくしている私。

 黒猫と大きな猪が仲良く話す、不思議な光景を眺めている。アウドラムの家族もだけど、みんなサタ様が好きだな。

 

 そうだとすると、この大陸の何処かには……まだまだサタ様が消えてしまったと、悲しむ魔族、魔物が多くいるのかもしれない。


「お帰りは3日ですか……早くお会いしたい」

「だったらフクロウを読んで、サタ様に手紙を書けばいいんじゃない? 私が手紙の代筆するよ」


「おお、その手がありました、ゲンさんサタ様に手紙を書きましょう」


 魔法都市にいる、サタ様に手紙を送ることにした。


「『ワイルドポポーのゲンです、サタナス様にお会いしたい。スズール森の水辺で待っております』これでいい?」


「はい、ありがとうございます、エルバ様」


「アール君も何か伝えることある? 私は昨日描いたからいいかな?」


「ボクも大丈夫です。それよりエルバ様、朝食べましたチャーハンというものが食べたいです」


 時刻はお昼を過ぎて夕方に近い。フクロウでサタ様に手紙を送って、ご飯の準備を始める事にした。


 ゲンさんにはアウドラム家族に出した、エダマメマメとトーモロコシを畑で採取して出して、チャーハンを作るからコメ草も収穫した。


 コメ草からコメを取りメスティンで炊いて、次にジャロ芋、レタスス、トマトマ、レンモンも採った。トマトマはサラダ用で、レンモンはシュワシュワ用だ。


「アール君、コメが炊けたらバター醤油チャーハンと、ジャロ芋のバターを作るからね。ゲンさんはどう?」


「とても美味しいです。あの、その、もう少しいただけると嬉しい」


 と言ったので、たくさん彼の前にエダマメマメとトーモロコシを置いた。

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