第166話

 カレーを作って、食べただけなのに?

 な、なにが起きたの? 私は打ったお尻を撫でながら、飛び出てきたテントを見つめた。


 いきなりカレーを食べた2人の魔力が、今まで感じたことがないくらいに爆上がりした。――いつもの、博士の効能報告が聞こえるが、いまはそれどころじゃない。


(あまりの凄さに体が震える。もしかして、神様仕様のエルバの畑から収穫したモノでカレーを作ったから、それともポーションの材料で作ったから……相当な効果はあると思うけど)


 ――これは尋常じゃない。


「エルバ、すまん」

「エルバ様、平気ですか」


「⁉︎」


 テントの中から出てきた、この人たち誰? と、思うくらいの魔力と美形な姿。――まあ、サタ様は初めて会ったときと、黒剣を回収するときに見た魔王様の姿だけど……隣の燕尾服、メガネ、黒髪の人は誰?


(前世の漫画、小説に出てくる意地悪メガネっぽい! エルバ様はバカでいらっしゃる。の言葉が似合いそう)


「エルバ様? どうなされました」

 

「ウハッ、声まで低い! ――な、なんで? 2人とも姿が変わったのに……私の姿は変わらないの!」


「そこか!」

「そこですか?」

「そこだよ!」


(そりゃ〜胸とか大きくなれとは、無理なことは言わないけど。髪が艶やかになるとか、私も2人のようになりたかった……)


「――ずるい」


「クク、ワタシ達はエルバのカレーのおかげで、本来の姿に戻っただけだ――元々減っていた魔力が体を満たし、体力もフル。いまなら国を一つ、いや2つ、3つと簡単に滅ぼせるぞ」


「はい、ボクも今なら破壊できますね」


 国を滅ぼす?

 破壊?

 

「ちょっと、サタ様、アール君、物騒なこと言わないで!」


 サタ様とアール君、みんながポーションの味が苦手で、私もカレーが食べたくて作ったけど……この効果はさすがにマズイかも。力が有り余って、色々と破壊して歩きそう。


(だったら、エルバの畑の素材は使わず。領地の畑でスパイスを育てた方がいいかな?)


「エルバ、まだ食べ足りぬ! カレーはもう無いのか?」

「もっと、カレーが食べたいです」


 カレーを作ろうと思えば、スパイス、材料もあるから作れるけど……サタ様とアール君にこれ以上、このカレーを食べさせてはダメな気がする。

 

「ごめん……カレーを作るの初めてだったから、少ししか作っていないの。まだ食べ足りないのなら、お好み焼き作る?」


「お好み焼きもいいな」

「はい。カレーはまた今度作ってください」


 にっこり微笑んだいつもとは違う2人に、お好み焼きを作るのだけど。もう一枚、もう一枚と、いつもよりも食欲がありすぎる! 

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