第30話

 神様仕様の空間魔法付きテントに驚きつつも、小腹が空いたので、シュノーク古城付近でコメを炊いていた。


(ここでも"ほったらかし炊飯"できるなんていい)


 キャンプ用具入れに、入っていた固形燃料は火の魔石に変わっていた。私が待っていた固形燃料は25g、この魔石も25gだとしたら、一合炊くのに火の魔石ひとつで十分。


 コメ草から採ったコメを一合分、2合炊きのメスティンに入れて水魔法でだした魔法水を400ml入た。次に四角い折りたたみ式のポケットストーブを取り出し開き、火の魔石をすこし凹んだ中央に置いて、その上にメスティンを乗せる。


 このポケットストーブは値段もお手頃で、軽くて持ち運びにも便利で、ゴトクにもなる優れもの。


「アール君この火の魔石と、辺りが薄暗くなってきたから、このランタンにも火をつけて」


 私のそばで神様仕様の"ふかふかアウトドアチェアー"に座る、アール君に声をかけた。


「はい、かしこまりました」

 

 ふかふか椅子から降りたアール君はひと吹きで、火の魔石と魔導具ランタンに火をつけ、軽やかに椅子に戻っていった。アール君そのアウトドアチェアーを気に入ってくれたんだ、うれしいな。


 ――椅子の上で丸々モフモフは良い。


 それをしばらく眺め、キャンプ用のテーブルの上にオイルランタンから、魔導具ランタンになったランタンを置く。ゆらゆら火を灯す優しいランタンの明かりにホッコリ。


 しばらくして、コメが炊ける甘い香りが漂うなか。

 私はエルバの畑からトマトマとレタススを収穫して、水魔法で洗い、ちぎりサラダを作った。次に、もう一つポケットストーブを取り出して、計量カップとしても使えるシェラカップに水魔法で水を入れ沸かし、エダマメマメをサヤごと塩茹でに。


(ちぎりサラダの味付けは家から持ってきた塩コショウ。私が現世で使っていた調味料はこの世界には無いものなのか消えていた。神様が楽しみながら見つけて、作りなさいと言っているのかも?)


 ――作る楽しみはあるよね。手始めにマヨネーズは作りたいな? 何にかけても美味しいし。


 20分くらいで火の魔石が消え、コメが炊きあがったメスティンをタオルに包んで10分から20分蒸らす。その間にシュワシュワを、持ってきた水筒に作りレンモンの輪切りをいれた。


 コメの蒸らしが終わったら、塩おにぎりを握って夕飯の完成。道具は神様仕様に変わったけど、ここでもキャンプができるのは楽しい。


 蒸らしが終わり、手を水魔法で濡らし塩をふり、軽くおにぎりを握っていく。出来たてのおにぎりを皿に並べ、ちぎりサラダ、茹でたエダマメマメ、コップにシュワシュワを注いだ。


 ――ここにお肉がないのは残念だけど、キャンプ飯ができた。


「アール君、夕飯できたよ」


「ありがとうございます、エルバ様――僕は火魔法でしか、お手伝いしていないのが心苦しい」


「違うよ。私が一人で『やりたい』『アール君は休んでい』とて言ったんだから気にしない。さあ、たべよう」


 私もキャンプ椅子を取り出して、2人でテーブルを囲み"いただきます"と塩おにぎりをかじる。


「おお、コメの硬さがちょうどいい――コメが甘い」


「ほんとうです。家でいただくコメと違います」


 これはアール君の言う通りかも。なぜか家で炊くと少し硬い……神様仕様はすごい、普通のメスティンが魔法? 魔導具? のメスティンに変わった。



 ――今まで、キャンプ道具を使わずにいたのがもったいない。



「エルバ様。エダマメマメはホクホク、ちぎりサラダも新鮮でシャキシャキ美味しい、シュワシュワもレンモン風味!」


 アール君が食べるたびに感動している。――フフ、外で食べるといつものご飯がさらに美味しく感じる。それが、キャンプのいいところでもある。


《疲労回復 腹持ち効果 風邪予防 美肌、胃痛改善 腸内環境改善 各種(小)発動いたしました》


 お、いろいろ食べたからなのか調理魔法が発動した。ちょっと凄すぎだけど、野菜はいつでもエルバの畑で取れるから、どこでも食べれるし。レンモンのアメを作って携帯すれば"どこでも疲労回復"ができそう――家に戻ったらママに相談してみよう。


 使用したクッカーたちは洗い物入れ箱の中へ。キャンプでは洗い場が混んでいたり、洗い場がないところ、日帰りキャンプをする時もあったから、持ち帰って家で洗っていた。


「エルバ様、その箱にはクリーンという浄化魔法が施されています」


「浄化魔法? クリーン? もしかして、いま入れたクッカーたちが綺麗になっちゃうの?」


「そのようです」


 確かめるために洗い物入れ箱を開けると、メスティンの焦げ付きが消え、クッカーたちも綺麗になっていた。


 なんと、洗い物入れの箱は便利な浄化ができる、魔導具にかわっていたのだ。

 

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