第73話
長き時を生きてきたサタ様、アール君、キキさんはわかるけど……モサモサ君まで見えてしまうとは、さすが勇者の末裔だ。
だけど、モサモサ君は頷いた後から魔法文字で謝ってくる。いやいや、悪いことではないから……そんなに謝らなくてもいいのに。
「私は気にしていないよ、むしろ協力者がたくさんいるから心強いし、楽しいよ」
えっと、驚いた瞳をしたモサモサ君の瞳は、透き通るような青色をしていた――その瞳がきらりと光る。
(な、涙?)
[よかったね、世の中にはその能力を認めてくれる人もいるって、私が言い続けたことが誠になった。エルバちゃん達に出会えてよかったね]
モサモサ君はコクリどうなずいた。彼は勇者の末裔で、確か第一王子だから、私には知らない苦労が彼にはあるのかな。
言葉だって、何か事情があって話せなくなったのかも。
「よし、クールタイム! みんな、ハッカ飴で気分をリフレッシュしよう!」
マジックバッグからツーン草で作った、スースー飴の瓶を取り出した。先に私が飴を舐めて、次に口を開けたサタ様、アール君、ヌヌの口に飴を入れて、キキさんとモサモサ君も一粒とり口に入れた。
口の中でコロコロ――
「「ん、スーッとする」」
「ふえぇ、お口が面白い~! この食べ物、楽しい!」
[私は精霊だから食べなくていいのだけど……興味本位でいただいたらおいしいわ。――これはまた食べたい]
「…………コクッ(おいしい)」
《ストレス軽減、気分爽快!》
気分がスーッと落ち着いた。
(よし、解毒薬を作るぞ!)
博士、キバナの花と乾燥させたカルア草を、その壺に入れればいいの?
《いいえ、エルバの畑からキバナの花、カルア草を採取して、そのまま壺に入れください。畑から採取して乾燥させたカルア草はお茶、薬として飲むことで効果がでます》
え、採取して、乾燥させたくていいの?
《はい、調合壺に素材を入れるだけ大丈夫です》
わかった。
ありがとう、博士。
さっそくエルバの畑から、キバナの花とカルア草を採取して壺に入れた。カタカタ――調合壺がカタカタと反応しはじめる。
(おお、どうなるの?)
《【調合成功率――1%】ですが調合をはじめますか? YES/NO》 と、壺のうえに文字がでた。
(……調合成功率、1%? それって無理じゃない? でも……やるっちゃないよね)
私は『YES』をタッチした。
《調合をはじめま~す。調合壺を指で左右に揺らしてください~! レッツ調合! ちゃっちゃっちゃー っちゃっちゃっちゃちゃー、ちゃっちゃ、ちゃっちゃうっ! ちゃっちゃっちゃー っちゃっちゃっちゃちゃー》
(え、ええ――?音楽付き⁉︎)
《レッツ調合、調合!》
私はその音に合わせて、壺を左右に動かした。
この調合壺を降ると、壺上の数字がカウントされて100%達成した。
《ブッ、ブー残念!【調合失敗! 】コゲゴケが完成いたしましたぁ~》
壺から真っ黒いコゲゴケがアイテムボックスに移動した……調合を、し、失敗?
「…………成功率1%だからか」
「ククッ」
「これは見事な、失敗ですね」
「うわぁ、やっちゃったね~」
「……クッ、もう一回!」
調合失敗。
もう一回!
失敗…………失敗。
失敗する度に次、次と頭の上のサタ様、アール君とヌヌは残念がることなく、アール君とヌヌは楽しそうに踊りはじめる。
キキさんとモサモサ君も『頑張れ』と応援してくれた。
だから何度、失敗しても落ち込まずに次々だとガンバレる。
次、次、つ――――――ぎぃ!!!
「あ、失敗……まだまだ、頑張れる、もう一回!」
10秒から1分待てば、エルバの畑で素材は採れる。
もう一度、もう一度……ちょうど100回目の調合で。
《エルバ様、おめでとうございます!!》
博士の声。
「「「出来たぁ!!!」」」
喜ぶみんなの声「【完成】」の文字を見たと同時に、目の前が真っ暗になった。
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