第38話
食材同士の相性がよかったのか、この光で魔力はほぼ回復した。サタナス様、アール君は体を動かして、自分の魔力量を確認している。
――もしかして、これってファンタジーゲームでいうところのポーションの役割をしたのかな? それともたまたま?
これは面白い。別の日にもう一度同じ材料で雑炊を作り、いまと同じような効果がでれば。食材の組み合わせで回復料理ができる。私の料理レベルが低いから稀かもしれないけど。
料理レベルが今よりも上がって、この世界の植物、果物、薬草の発見がドンドン増えれば――とんでもない料理ができそうだ。
でも、薬草から作るポーションもあったら、材料を集めて作って見たいかも。
《エルバ様。レシピ帳にもこ鳥の雑炊が載りました》
ありがとう、博士。
博士はこれまでにも作った料理をレシピ帳に乗せてくれている。私はキャンプ料理、家庭料理、簡単な料理しかできないけど。もっと、料理もおぼえたい。
――益々、楽しくなってきた。
「うむ。ひさしぶりの魔力回復はいいな……エルバ、先程のナイフを借りてもよいか? 少し散歩にでてくる」
「いいですけど……怪我のないように気をつけてください」
サタナス様にアイテムボックスから、ダマスカスナイフを取りだし渡した。彼は受け取るとナイフをみて微笑み。
「やはりよいな。しばし借りる」
「はい、サタナス様いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ、サタナス様」
"いってくる"と。サタナス様は背中にコウモリのような、羽根を生やし夜空を飛んでいった。その姿を見送りアール君はもふもふ椅子へ。私はパチパチ音をだして燃える、焚き火に薪をくべなら炎をながめていた。
――ああ、炎のゆらめきは癒される。
今、ここにマシュマロがあれば、外側はカリッとして、内側はトロッとした焼きマシュマができるのに……と、考えていると、段々甘いものが食べたくなった、私の近くの低木に黒い実が実っていた。
博士、あれは何?
《あれは、キイチゴ属ブラックベリリーという果物です》
果物? ベリリーは食べられる?
その効果は?
《野生ブラックベリリーは食用です。ダイエットに効果あり》
博士にタネをもらって畑に植えた。一つ食べてみようと実に触るとポロッと採れる。その採れた実を水魔法で洗い食べてみた。
お、おお、甘味と酸味がほどよい。
「おいしい!」
もう一粒食べようと手を伸ばすと、ペシッと2本の尻尾が邪魔をした。なんと、もふもふ椅子でくつろいでいたアール君は音を立てず私のそばにいたのだ。
さすが黒猫のアール君……さっきサタナス様と散歩に行きたそうにしていたけど。私がこの原っぱで"変なもの"特に毒草、麻痺草を口にしないか見張っていたのか。
まあ、シュノーク古城での毒矢のこともある。
アール君はその事について、後で聞くと言っていたし。
「大丈夫、これはブラックベリリーという果物で食べれるから……すごく美味しいよ。アール君もブラックベリリー食べる?」
ベリリーを進めると『パクッ』と私の手から食べて。
「ん? な、なんですかこれは? 甘く、ほどよい酸味でおいしい。エルバ様、ブラックベリリーをシュワシュワにいれたいです」
「いいね、シュワシュワもいいけど。家で、ジャムにするのいいかも」
「ジャム!」
2人で並んで、黙々とブラックベリリーをシェラーカップに集めていた、そこに羽音が聞こえサタナス様が戻ってくる。
戻ってきた彼はなんと、着ていたシャツとスラックスは汚れ、裂けているのにもかかわらず――上機嫌で笑っていた。
「フフ、ハハハッ! よい狩ができた……エルバ、アール、もち鳥のほかにオオトカゲ、ビッグベア、飛龍を狩ってきたぞ。それら全て血抜きはして、アイテムボックスにしまった。――さあモンスターの肉を焼こう!」
「モンスターのお肉で、焼肉?」
魔力をフルに回復した、サタナス様の力に驚く私と。
『お肉!』と、喜ぶアール君がいた。
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