第15話

 アール君と急いでキッチンに向かったけど、パパとママは怒ってはいなかった。

 むしろ、シュワシュワを美味しそうにコップで飲むママと、密封容器ごとゴクゴク喉を鳴らせて、飲んでいるパパがいた。


「うまい、病みつきになる……何だ? この喉がピリリする飲み物は!」


「美味しいわ。コレ、エルバが作ったの?」


 ちょうど、冷やし庫で冷えて……飲みごろを全部飲まれた。


「そうだけど……パパ、容器のまま全部飲んじゃうなんて、アール君とシュワシュワが冷えるの待っていたのに」


「すまん。これはシュワシュワというのか……仕事からの帰り、少し飲むつもりが、喉を通り過ぎる爽快感とピリリが美味くてな」


「ごめんね、エルバ。もう一度シュワシュワ作ってみて、ママが魔法で冷やすから」


「ええ、ママが魔法で冷やしてくれるの? アール君、冷えたシュワシュワが飲めるよ」


「おお、それは楽しみです」


 新しいピッチャーに水瓶から魔法水を入れて、さっき畑から採取したシュワシュワの実を、アイテムボックスから取り出して一粒入れた。


 この赤い実にママが食いつく。


「エルバ、その赤い実はなに? 食用なの? エルブ原っぱで見つけたの?」

 

「そうだけど……ちゃんと、食用だから安心して」


「わかった。――でも、見たことがない実で驚いたわ。エルブ原っぱに……まだ、私たちの知らない植物があるなんて。発見したエルバはすごいわ。コメ草の時もそうだけど、エルバには不思議な力があるのね」


 ――ドキッ!


「そうなのか、俺の娘は凄いな。ガハハハッ!」


 詳しく聞かれるかもとドキドキしたけど。パパとママは嬉しそうに笑い、それ以上聞いてこなかった。



 ピコン。


《調理レベルが1レベルに上がりました》


 調理レベル?


 なんと、いま"シュワシュワを作って"私の調理レベルが上がった。その調理レベルって――ただ、魔法水に赤い実を入れただけなんだけど……まっ、いいっか。


《エルバ様の調理レベルが上がりましたので。新しく"エルバのレシピ帳"を取得いたしました。シュワシュワの調理法をレシピ帳に載せますか》

 

 エルバのレシピ帳?

 私の新しいアイテム?


《レシピ帳に載せますか?》

 

 はい、お願いします。

 

 エルバのレシピ帳に、シュワシュワの調理法が載った。

 あとで、ステータス画面を開いて確認しよっと。


 


 ママはシュワシュワを冷やすために、氷魔法の「【アイス】」を唱えた。目の前に水色の魔法陣が現れ、シュワシュワが入っているピッチャーの中に、小さな氷がコロンコロンと増えていく。


「わぁ――氷魔法って綺麗」

「フフ、綺麗ね」


「キレイだな。俺には魔法の事はよくわからんが、面白いな」

 

「はい、面白いです」


 そして、ついに飲みたかった……冷やしたシュワシュワ。ママが魔法でだした氷で冷やされて、炭酸水がプクプク泡を出しコップにそそがれる。


「はい、エルバ、アール君。冷えたシュワシュワ」


「ありがとう、ママ、いただきます……ゴク、ゴクゴク、んんっ、喉がシュワシュワする。んん、冷えたシュワシュワ最高!」


「ほんとうです! エルバ様、パパ様、ママ様、冷やすとまた格別です!」


「ンン! ホントうまいな!」


「ええ、美味しいわね。みんなに、ものは提案なんだけど――これに果物を入れるのはどう?」


「果物? いれたい」

「僕も入れたいです」

「美味そうだな」

 

「じゃ、いま温室から持ってくるわね」


 と、ママが裏庭にある温室に果物をとりに行った。


 ――冷えたシュワシュワに果物かぁ。

 炭酸水――シュワシュワに入れたら、絶対に美味しいに決まってる!

 

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