リリンゴのシュワシュワ

 ママが持ってきた果物は、色も見た目もリンゴそのものだった。

 

(異世界のリンゴ?)


 博士、この果物は何?


〈…………〉


 ――あれ? 博士の反応がない?


 博士


〈…………ただいま、調べております。少々お待ちください〉


 え、調べてる?

 博士も知らない果物?

 


「……ママ、この果物なんていうの?」


「これはね、リリンゴと言って。いまママが温室で作っている果物よ」


「おお、リリンゴか……なつかしいな。若い頃は樽一杯のリリンゴをかじったもんだ!」


「フフ。リリンゴはパパの大好物だものね。だから、いま数は少ないけど――裏庭にある温室で作っているの」


 見つめ合って、微笑むパパとママ。

 このリリンゴはママがパパのために作ってる――リリンゴなんだ。


 

 

 いつもと違う、博士に質問をかえてみた。


 博士、リリンゴについて教えて。


《……はい、これは野生リリンゴの改良版――改良リリンゴといいます》


 野生リリンゴ?

 改良リリンゴ?


《野生リリンゴとは――魔族の森に実る栄養価が高い果物です。改良リリンゴの詳細は不明》


 魔族の森に?

 詳細が不明?


 改良された果物だから、博士の反応が違ったのか。

 改良リリンゴは――ママが魔族の森に実る、野生リリンゴを品種改良したもの。


《野生リリンゴではない為、タネはありません》


 そうきたか。このリリンゴのタネをもらうには――原種の野生リリンゴを見るか、発見するしかないのか。


 ありがとう、博士。




「いま、リリンゴをきるわね」


 ママはリリンゴの皮をむき、まな板のうえで薄くイチョウギリにした。そのリリンゴをもらい、シュワシュワにいれて。

 


「「「「いただきます!」」」」


 

 ゴク、ゴク――おお! リリンゴって、味もリンゴだ。

 甘いリリンゴの果汁がシュワシュワの中にとけ込み。ほんのり、リリンゴ風味。


「おいしい! パパ、ママ、アール君、リリンゴのシュワシュワ、すごく美味しい」

 

「はい。エルバ様……リリンゴのシュワシュワおいしいです」


「ほんと。ほんのり、甘くなって美味しいわ」

 

「うまい! リリンゴのシュワシュワ、最高にうまい! いろんな果物をシュワシュワの中にいれて、飲んでみたいな」


「それ、美味しそう」

「飲みたいです」


「いいわね、いろんな果物を集めないと」


 コメ雑炊に続いて、シュワシュワも"ウチの定番"になった。

 

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