第104話
私達は学園の奥に生える、キバナの木の妖精キキさんのところへと向かった。あいも変わらず黄色い桜に似た花を咲かせる精霊のキキ。
この木は枯れることなく花を咲けせ続ける。
「キキさん!」
「調子はどうだ?」
「ご機嫌いかがですか?」
[あら? エルバちゃん、サタ様、アール君来てくれたの? 会えて嬉しいわ]
「あれからどうだ?」
[そうね、グルナにローザンというお友達ができたの。2人でよくここに訪れてくれる……あの子はまだ、このキバナの木を毒にしようと……諦めていないみたいだけど。解毒薬のおかげか前より辛くないわ]
フワフワ飛び、いつにも増して綺麗なキキさん。
前の解毒薬が、まだ効いていてよかった……そうだ。「解毒薬まくね」と、私はマジックバッグから昨夜作った解毒薬を取り出し、キキさんの根元に撒いた。
解毒薬が染み込んでいき、キキさんな体が緑色に光る。
[ああ、気持ちいい……体に染み込んだ毒が消えていく。ハァ、ありがとうエルバちゃん]
「フフ。どういたしまして、喜んでもらえて嬉しい」
「うむ。だが……まだ奥に残る毒までは解毒出来ないな……」
「そうですね。染み込んでしまっているので、地道に解毒していきましょう」
「「おう!」」
学園からチャイムの音が聞こえ、休憩の時間のようだ。この場所にモサモサ君と新魔王くんたちが、来るのかと思ったけど――誰も来ない。
まだ、お昼前だからかな?
「ねぇキキさん、グルナくんとローザン君が来ないね。彼らはお昼休みの時に来るの?」
[2人は今、王都から東側のマーレの港町に行っています……グラナからの話では、その港街に大型の魔物クラーケンが出たとかで、学園の実力者たちが2日前から研修も兼ねて遠征中です]
「「遠征中? 大型の魔物クラーケン⁉︎」」
おう……クラーケンって、どんな魔物だ?
知らない魔物に驚く私と、何やら知っているサタ様とアール君。
「まさか、あいつか⁉︎」
「サタ様、あり得ますね……あの方は滅多に人を襲うことはしませんが……かなり面倒な方です」
「……そうだな」
人を襲わないけど、面倒?
「サタ様とアール君は、そのクラーケンという魔物を知ってるの?」
「うむ。実物を見てみないと何とも言えないが……多分、知っている」
「ええ。クラーケンの王、パワー様……かもしれません」
「パワー様?」
[王様? だからね。昨夜、疲れた様子のグラナからの報告が来たのだけと……剣と魔法を弾くそうよ。一緒に行ったローザンは側で何語かわからない言語で話しかけるのだけど――彼の話をまったく聞かないみたいで、自分は魔王なのに……『役ただずだ』と落ち込んでいるみたい]
クラーケン王に新魔王様のローザン君の話が通じるのなら、私の話もサタ様経由で通じる⁉︎
だったら、大型魔物のクラーケンとやらを見てみたい。
「サタ様、アール君! 私達も、その港街に行きましょう!」
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