第18話
この世界で、十六歳は成人とされる。
私も十六歳になり、大人の仲間入りをした。
大人になったということで、いままで聞いても、ママは"エルバは気にしなくていいのよ"と、私が子供だからか何も教えてくれなかった魔法都市サングリアの話。
今日の昼食後、仕事が休みなパパとママにアール君と習う事になった。
ここ魔法都市サングリアは人、魔族との交流がなく、お金――通貨そのものがない。そのため税金、家賃などもない。必要なガス、水道、電気などは魔法で補えるからだそうだ。
通貨がない魔法都市サングリアでは。
主に物のやり取りは物々交換で、物の取引が行われている。
都市に住む亜人族達はと聞くと、魔法が得意ではない彼ら、獣人族は森に住むモンスターを狩り。コムギン、小麦などの食物を育てている。鬼人族は井戸を作りコメ草、野菜を育てていて。エルフ、ドワーフ族の生活もほぼ同じだとママは話してくれた。
彼らはその狩ったモンスター、食物などを、魔女、魔法使いがつくる魔導具、薬と物々交換して、日々暮らしているのだそうだ。
だとすると、鬼人が作るコメ草をママが何かと交換して、手に入れたのか。
コメが登場する前の食事は芋類、パン、スープ、野菜といったもの。
(私はパン、芋が好きだったから気にならなかった)
それが、今や――コロ鳥の卵雑炊、モンスター肉入り雑炊、おむすびも豆と炊いた物、お漬物、お肉で巻いた物と種類が豊富になったし……シュワシュワにも私がまだ発見した事がない果物が入り、色鮮やかな飲み物に変わっていた。
私の名前が付いた"エルバコメ"の名付け親はママだった。嬉しそうに「いい名前でしょう」と、微笑むママに……何も言えない。
「フフッ」
話のとちゅうで、ママが笑った。
「どうしたの、ママ?」
「とても、嬉しいの……かつて人間に利用され、傷付き、何百年と変わらぬ生活を私達は送っていたわ。……私達の宝物のエルバがもたらした"新しい風"で変わった――毎日、みんなは何かに没頭して、新しい物を作っている」
「そうだな……都市に住む、みんなが笑っている」
「ええ、表情が明るくなったわ」
昔を思い出しているのか、遠い目をするパパとママをみつめた。
「パパ、エルバ、アール君、たくさん話してお腹すいたわね。夕飯なに食べる?」
「そうだな……エルバ、アール何か食べたいものがあるか?」
「僕はエルバ様の食べたい物で」
「私?」
――うーん、私の食べたいものかぁ、そうだ。
「コムギンを使って、うどんなんてどう?」
「「「うどん?」」」
パパ、ママ、アール君にコムギンを水と塩で練って、2~4mmに伸ばして、包丁で5~8mmぐらいの幅に切って、たっぷりのお湯で茹でて食べると説明した。
「うどんには何をつけて食べるの」
「えーっと、温かいうどんなら雑炊の時のようにピコキノコで出汁をとって、コロ鳥の卵を回し入れるか、生のまま落とすとか。冷たいうどんにするなら出汁を濃いめにとればいいかな?」
と、みんなでうどん作った後日――都市に登場したコロ鳥の卵とじうどんをはじめとした、釜揚げうどん、肉うどんに驚いた。
いまにパスタ、ラーメンの作り方を知ったら、できそうな勢いだ。
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