第19話

 エルバも16歳になったからと、パパとママに魔法を使う許可をもらった。


 ――ついに魔法が使える! と、はじめはアール君に教えてもらおうと、思ったんだけど……。

 

 アール君に魔法のことを聞いたら、こう"バッ"と体に魔力を止めてから"ガッ"とだすんです。と、いちおう魔法初心者の私に、彼は分かりにくい説明をしてくれた。


「アール君、バッ? ガッ? それじゃわからないよ」


「そうですか? エルバ様みていてください。こう"ガッ"と魔法をだすんです」


 と、言って、アール君はかんたんに"火魔法ファイア"をだした。


 アール君の仕草はかわいさ満点なのだけど。

 まあ……その説明でも一応わかるけど。それだと"コツを掴むまで時間がかかりそう"かな? となり、ママに教えてもらうことになった。


「エルバ、深呼吸して」

「はい」


 いま庭先で、私の周りに暴発防止の結界を張り、魔力を感じる訓練中だ。


「つぎに目をつむって、心を落ち着かせて自分の魔力を感じるの」


「……自分の、魔力を感じる」


(これは――生まれたときから魔法の光を操って、練習いたから簡単だ)


 光の球を操っていた時と同じように、心を落ち着かせた。――すると、体を包み込むように金色の糸のようなものが見え、自分の魔力を徐々に感じ始める。


 ――ママはそれに気が付き。

 

「その調子、エルバの中にあなたの魔力が集まってきているわ……水魔法【ウォーター】と唱えてみて」


「【ウォーター】」


 ほんらいは少量の魔力を集めて、目の前にある水瓶に魔法水を貯めるはずが――緊張したのか、魔力を集めすぎたのか……魔法で出した水が爆発した。


「あ、あれ? え、水が止まらない!」


 光の球のときとは違い加減がわからず。結界の中に魔法水を放水して、なかにいたママと自分をびしょ濡れにした。 


 ――ママはずぶ濡れになっても怒らず、楽しげに笑い。


「フフッ、エルバにはまだ自分の魔力コントロールが難しいみたいね。でも、はじめはそれでいいのよ」


 と、結界を解き。風魔法【ウィンド】で、濡れた服を乾かしてくれた。




 それから一ヶ月をかけて、やっと水瓶に魔法水が貯められるようになった。ママは次の魔法訓練にうつりましょうと、竹ぼうきを持って庭にあらわれる。


「繊細な魔力コントロールが必要な、ほうきに乗る練習を、これから毎日一時間はしなさい」

 

「毎日。一時間、ほうきに乗る練習すればいいの?」


「ええ、そうすれば、もっとコントロールが上手くなるわ」


 魔法都市では殆どの人が移動に使っている。

 座って乗る人もいれば、立ったまま、紐をつけてぶら下がって乗っている人もいる――私は普通でいいかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る