第136話

 シシリアの森を抜けて領地に戻る、私達の目の前に白いドラゴンではなく、真っ白な長い髪と赤い瞳のキラキラした美形がいた。


(あの人の周りがキラキラ……光ってる)


「ユキ、どうした?」

「どうしたのですか?」


 サタ様とアール君はユキと呼び近寄った。そのキラキラさんの肩の上にはラッテさんがいる。やはり白いドラゴンの人か……サタ様の人型と同じくらいの美形だ。


 そのキラキラさんは黒モコ鳥のサタ様に跪き。


「我が主人、サタナス様? これはまさしくサタナス魔王様。おお――!! 生きていらしたのですね、お久しぶりです」


 と、ユキさんは真っ白な鎧を身につけた。

 そして、キラキラさんはさらに光をまとった。


「おいおい、正装などする必要ない。ワタシはもう魔王ではないのだぞ!」


「いいえ! 我らにとって、あなた様はまだ崇敬(すうけい)するに値するお方です。あなた様以外、いない!!」


「そうか?」


「そうです! またあなた様にお会いできてユキは幸せです。また側でラッテと共に守らせていただきたい!!」


「うむ、頼もしいな」


「ありがたきお言葉!」


 ……うおっ、サタ様が押されてる。キラキラさんなにやら熱い? 熱血キラキラさんは嬉しそうに、キラキラした涙をハンカチで拭いていた。


 まあ、なんと言うか……見た目だけは乙女ゲームに出てきそうな人かも。


 


「ユキ、ワタシ達に話があるのではないのか?」

「そうでした、皆様に聞いていただきたいことがあります」

 

 みんなは食事をとる大テーブルに移動した。

 私はその近くでアイテムボックスからテーブルを取り出して、レンモンのシュワシュワを用意することにした。


「シュワシュワ? アビも手伝う」

「ほんと、アビス君ありがとう」


 ママに教わって出来るようになった氷魔法で、小さな氷をボールにたくさん出した。畑を開いて赤い実を収穫して、魔法水と氷が入ったピッチャーでシュワシュワを作る。


「プププ。このプクプクの泡、毎回見ても面白いね」

「でしょう、面白いよね」


 出来上がったシュワシュワにレンモンの果汁を縛り、みんなの愛用のコップに入れて、最後に輪切りのレンモンをいれた。


(シュワシュワもいいけど、コーラが無性に飲みたくなる。前世でクラフトコーラがあったから、私でも作れるのかな?)


 後で料理博士にレシピ聞いてみよっと。


「エルバちゃん、アビ、運ぶね」

「ありがとう、お願いします」


 みんなはテーブルに集まり、真剣な顔で話していた。

 私もサタ様の横に座り話に参加する。ふむふむ――ここがわかったのは、相棒のラッテさんの魔力を辿ったのか。


(魔力を辿るとか、サタ様の魔力を感じたとか。みんなのこう言うのがすごいよね……私にはできないけど)


 小さく、ため息をついた。


「エルバ、これからずっと共にいれば、自ずとも分かるようになるぞ」


「え?」

「そう考えていたであろう?」


 ――うっ、またサタ様に心を読まれた。


「もう……そうなれると嬉しいかも」

「エルバなら、なれる」

「エルバ様なら、きっとなれます」


 嬉しいこと言ってくれるんだから。


「クク、話を中断して悪かった、ユキ続けてくれ」

「はい」


 ユキさんの話は人里に魔族の村があるとのこと。旅に出る前により、そこの人々に優しくされたと話したユキさん。


 旅も終えてこちらに戻るさい村によると、村の人々は前と同じく優しくされたが……みんなは何かに怯えているようだった。そしてユキさんに何処か、人がいない場所を聞いてきたようだ。


「なんでも、アルクスの王都に聖女が現れたみたいなんだ」


「なに聖女だと?」

 

「「聖女⁉︎」」


 みんなの驚く声が領地に響いた。

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