第50話

 鳥籠からサタ様を助け人里から帰り、みんなで庭でのバーベキューと銭湯を楽しんでから一週間が経過した。あれからパパとママはテントのお風呂にはまり、露天風呂を始め、私がキャンプでおとずれた温泉を幾つか想像した。


 はじめは真っ白だった空間に、春は桜、夏はひまわり畑、秋は紅葉、冬は雪と四季折々の風景が増えたのだけど。私の前世の記憶も薄れてきたため、思いだすのも困難になってきたし。

 こうだったかな、あーだったかもと想像するのも、中々難しいのだ。


 


 使い魔に元魔王のサタ様が増え、エルブ原っぱ以外に魔法都市外、シシリア大森林の手前のソーマの森にまで、採取に出ていいとパパとママが許可してくれた。


 このソーマの森は都市に住む亜人達の里に近いため、獣人はイノシーシ、ウサッチ、コロ鳥などの狩り。エルフ、鬼人はキノコ、果物、山菜の採取をしている。

 ドワーフは独自の観察能力で鉄鉱石、鉱石をみつけて掘り。大昔は刀、剣、鎧を作っていたけど、いまは農機具、包丁、草刈り鎌、ハサミなどを作っているそうだ。


 私達もさっそくソーマの森に行き、ヨモギン、欲しかったショウガロン、トウガラシシ、アンズン、カレンの花、バジルルを新たに見つけた。他に毒草と麻痺草も数種類みつけたのだけど、サタ様とアール君は『エルバの畑に種を植えるだけだ』と味見はさせてくれなかった。


 私のスキル、博士も大活躍。


 ヨモギンは二日酔い、ショウガロンは料理に使えるし、体の中からぽかぽか温めてくれる。トウガラシシは体脂肪の燃焼、冷え症の予防改善。アンズンは咳止めと疲労回復の効果あり。

 

 ――アンズンが疲労回復なら、アンズン飴とか干しアンズンを作って携帯しても良さそう。


 カレンのオレンジ色をした花びらをオイルに漬け込めば、炎症を抑え肌を整えてくれる。バジルルは料理に使え、食欲不振、リラックス効果あり。

 バジルルはサラダに混ぜて生でもいいし、オイル、ニンニク、塩でバジルルソースを作ってピザソース、パスタにあえれば美味しい。


 など考えながら、ソーマの森で私が植物を発見中。

 モコ鳥のサタ様と黒猫のアール君は狩場で、イノシーシとコロ鳥を見つけ狩っていた。


 二時間後――二人は満面の笑みと泥んこで帰ってきた。


「良い狩ができた! エルバ帰ったら風呂だ!」

「久しぶりの狩り、楽しかったです。僕もお風呂に入りたい」


「じゃ、帰ろっか」

 

 森の帰りに鬼人直売店に寄って、サタ様とアール君が狩ったコロ鳥を、タマネギギ、ニンジンジ、トーモロコシを交換してもらった。


 タマネギギは疲労回復、血液サラサラ。ニンジンジは腸の働きを活性化して、トーモロコシは腸内環境を整え、夏バテ防止だと、博士は教えてくれた。


 ありがとう、博士。

 タネを頂戴。


〈かしこまりました〉

 

 新発見もドシドシ増え、植物図鑑、博士に多くのタネをもらい。ここ数日でエルバの畑は充実した。

 



 ❀

 


 

 別の日。


 神様仕様でどんなキャンプ道具に変わったのか、サタ様とアール君と部屋で確認することにした。


 まずはじめに、テントは空間魔法がかけられていて、想像で中が自由に変えられるけど、中に人がいる場合は使用できない。キャンプテーブルはどんな重さにも耐え、大きさ、高さを自由に変えられるみたい。


「このテーブルの大きさ、高さまで、変えられるのは便利だな」

 

「これなら大人数になっても、みんなで一緒にご飯が食べるよ」


 サタ様お気に入りのダマスカスナイフは切れ味が落ちず、錆びつき、刃こぼれ防止。もう一本のナイフも確認すると同じ効果だった。サタ様にこれなら持っていてもいいと言ったが、彼はダマスカスナイフがいいらしい。

 

 卓上コンロにも一定の火の調整が付いていて、汚れ付き防止で、バーベキューコンロには火魔法と卓上コンロと同じ、汚れ付き防止付き。


 だから庭でのバーベキューの後、コンロをスポンジで軽く擦って洗っただけでお肉の油汚れ、焦げ付きはキレイに落ちたのか。前に使用した卓上コンロは、直ぐに洗い物の箱に入れたから気付かなかった。 


 ――バーベキューコンロの焦げつき防止はいい。


 洗い物の箱に入らないし、洗剤につけ置きしたり、タワシでこすらなくても、油汚れと焦げ付きがすぐに綺麗になるなんて嬉しい仕様だ。


 テントの中に引くキャンプマット、ラグはクリーン魔法と、大きさ、厚さ自由に変えられる。今は魔法で自由に変えられるテントがあるから、サイズを調節して部屋で使うことにした。キャンプマットも同じ様に部屋に敷いている。


 洗い物入れの箱にはクリーン魔法。焚き火の炭入れには再生魔法が掛かっていて、蓋を開けてびっくり。なんと、人里で焚き火に使い、炭になった薪が元に戻っていた。


 水筒はクリーン魔法と耐久性アップで壊れにくい。


「炭になっても、これに入れれば元の木に戻って再利用ができるから、枝ひろいをしなくていいし。水筒のクリーン魔法と耐久性アップは助かる」


「どちらも、便利ですね」


 クッカー、メスティン、シェラカップは汚れ防止と壊れ防止魔法。火の魔石には永久に無くならないのか、アイテムボックスに無限大の♾のマークが付いていた。


 熱いものを持ったり、フェザースティック(木を鳥の羽のように薄く削る)を作るときに使う耐熱グローブは業火対応? 地獄の業火? 


(きっと……100度以上の熱いものが持てるのね)



 空になった調味料ケースはこれから使うとして。

 ファイアースターター(火打ち石)は火魔法があるけど、もしもの為にしまっておこう。


 アール君のアウトドアチェアーにはクリーン魔法と壊れ防止っと。


「これで、全部見たかな?」

「うむ。いい道具ばかりだな」


「はい、どれも壊れにく、ズッと使えますね」

 

 そう、全てのキャンプ道具に『耐久性アップ』がついていたのだ。

 だけど歯ブラシ、歯磨き粉、傷バン、消毒薬、包帯、消えているものもあった。

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