第5話

 好奇心に負け痺れ草を食べ、エルブ原っぱでお昼寝中。近付く足音と、顔がモサモサして目を覚ますと、顔の上に得体のしれない"ナゾの薬草"が置かれていた。


 ――だ、誰かのいたずら?


 いや……周りは大人の人しかいないし、十歳の私にそんなことしないだろう。その薬草を手に取って調べると、枝に小さな赤い実が実っていた。


 これ、はじめてみる薬草だ。

 博士、この薬草は何。


《これはピリトリ草といいます》


 ピリトリ草?

 効能は?


《薬草にみのる、赤い実は麻痺を取り除いてくれます》


 痺れとり?


 博士にタネを貰い畑に植えて。薬草から赤い実を一粒とり食べると、口の中でプチッと赤い実が潰れた。


「ス、スッパイ――!」


 梅干しよりも酸っぱい……でも、すぐに効果がでて、体の痺れが取れた。


 この薬草いったい誰がくれたのだろう。まわりを探したけど誰もいない『ありがとう』と、お礼を言ってマジックバッグにしまった。




 二年が経ち私も十二歳になり、一つ覚えたことがある。それは「ステータスオープン!」と唱えると画面が現れて、私のステータスを教えてくれる。


 先の方で気付くのかもしれないけど、薬草を調べるのが楽しくて、その存在をすっかり忘れていた。


 思いついて唱えたらステータスがみえた。



 名前・エルバ(12)

 職業・時渡りした魔女(キャンプ好き)

 レベル・50

 体力・1500

 魔力・2000

 攻撃力・1500

 防御力・1000

 俊敏性・100


 スキル・植物鑑定(MAX)複合図鑑100/53


 麻痺耐性(強) 毒耐性(強) 強化胃袋(鉄壁)

 魔法 火、水、氷、風(レベル1)生活魔法(レベル1)調理(レベル1)調合(レベル1)


 固有スキル・エルバの畑(レベル3)


 どうやら私は麻痺、毒は効きにくい体質みたい。

 そして、アイテムボックスも入れるだけで、中身を確認していなかった。なかを確かめると採取した薬草のほかに。――あの日、リュックに入っていたキャンプ道具がはいっていた。


 ――飛ばされたときカバンごと抱きしめたから、一緒に異世界に来たのかな?


 二合、三合炊きのメスティンと五徳、風防、自由自在折りたたみテーブル、クッカーセット、ヤカン、スキレット、寝袋、テント、オイルランタン。


 どれも、私の大切な愛用品だったから嬉しい。




 ❀




 ある日――食卓の上に稲穂に似た薬草が束になって置かれていた。もしやコレはお米じゃなかろうか。


 すかさず博士に聞いた。


《これはコメ草といいます》


 コメ草……この世界の野菜――ジャロ芋とかダイダイコンなど名前は違うけど、見た目が前世と同じな野菜は数あったけど……お米はまだなかった。


 博士、これ食べられる。


《食用です》


 食用、食べられる。

 効能は。


《タンパク質、糖質、ビタミン、炭水化物、食物繊維が豊富です》


 コレ、お米きたかも!


 「博士、タネを頂戴」


 この日、エルバの畑にコメ草が生えた。

 薬草だから田んぼでなくても育つのは、さすがファンタジーの世界だ。

 

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