第23話
私の好きな世界だけど役割は一般人――モブと呼ばれるものだろう。この小説にエルバの名前はでてこないし、私が生まれた、魔法都市サングリアの名前もでてこない。
王都、学園といった、人が住む世界で物語は進んでいた。……だから、私は前魔王様を見つけて事情を説明して、魔王の座を退いてもらうだけでいい。これから始まるであろう、主人公たちの恋物語にさほど影響はでないかな。
――よし、ママに言うぞ! と気合を入れて。
「ママ、このシュノーク古城にいきたい」
と告げて。指でシュノーク古城の位置を示すと、ママはその場所を見て、困惑する表情を浮かべた。
「エルバ、このシュノーク古城があるところは……人里、人間が多く住むところよ。人は詠唱を唱えず魔法が使える――私たち魔法使い、魔女を恐れている――みつかれば酷い目に遭うわ」
「そうです、人は……僕達に刃をむけます!」
人里と聞いたからか、人に良い思いがないのかアール君も止めた。――ここ魔法都市サングリアに住む魔法使い、魔女は詠唱しないで魔法を使うし、各々が編み出した独自の魔法が多い。
それに、ママがいまいったことは――大昔、中世でおこなわれていた魔女狩り……のこと? 魔術を使ったと疑われる者を火あぶり、処刑が行われていたとされる。
――この異世界でもそんな事がある? ……それは怖いけど。パパの命がかかっているから引けない。
「で、でも、ママ。このシュノーク古城に……もしかすると、前魔王様が囚われている……かもしれないといったら?」
「え、前魔王サタナス様がここに囚われている? どうして、エルバにそんなこがわかるの?」
「…………そ、それは」
前世、ここと似た世界の小説を読んでいるから。
――それでも前魔王様がシュノーク古城にいるって、確信があるわけでもない。だけど、その場所にいってみないことには始まらない。
「ママ……これだけは約束する。どうして私が知っているのか――わけはかならず戻ったら話します。そして、シュノーク古城で前魔王サタナス様がみつからなかったら、すぐに魔法都市に戻る」
「ママ様、僕もついていきますので安心してください。この命にかえても、全力でエルバ様をお守りいたします
「アール君まで……」
"おねがしいます"と、アール君はママにふかぶか頭を下げた。
愛するパパの命、危ない目に合わせたくない私と、アール君のことで、ママは悩み言葉を詰まらせる。しばらくママは悩みに悩んで"スゥーッ"と息をすい……しばらく目頭を抑えた。
そして、わかったと頷いだ。
「……エルバ、アール君、シュノーク古城に行くことを"特別"に許可します。だけど、危ないことはけしてしないこと……特にエルバは"かわった薬草"をみつけたら、周りに人がいないか確認すること。アール君、エルバをよろしくね」
「ママ、わかった」
「ママ様、かしこまりました」
「これは、2人にママからの約束ですからね……本当に危ないことはしない、寄り道もしない、無事に帰ってくるのですよ」
「「はい!」」
「かならず、約束は守りなさい!」
念を押して――ママはアール君と一緒ならと許してくれた。
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