第177話 これで、一件落着だな

教会の前では、既に皆が待っていた。

その中央には、ティナと手を繋ぎ、目に涙を浮かべ微笑むジェシーが立っておる。


「バーニー、着いたぜ。そろそろ起きて、ママに元気な顔を見せてやんな♪」

そう、ジムが指先でバーニーの頬を突くと、「うーーん」と伸びをひとつ。

「うん?ジムおじちゃん……ママって……」

そう、まだ眠そうに目を擦る。


ジムは馬を降り、そのバーニーを地面に立たせる。

「バーニー♪」

「えっ、ママ♪」

バーニーは駆け寄り、飛び込む様にジェシーの胸に。


「ジム、これで、一件落着だな」

ゴブリン供を蹴散らし、ヘルマス一家いっかも始末した。

そして、さらわれたバーニーもジェシーの元に。

「ああ、旦那」


「ドウマ、ジム、二人には何と礼を言えば良いか分からんな」

オーウェンが疲れも見て取れるが、清々しい笑顔を浮かべながら声をかけて来る。


女帝エンプレスが率いるゴブリン供の襲撃、そして、手段を選ばんヘルマスのヤツ等。これだけの事があって、誰一人、死んだ者はおらん。それに、マーサの事も……ドウマ、さっきは禄に礼も言えなかったが、ホントに感謝する。この礼は必ず……」


「フッ、礼など無用だ。ワシもこの地の油田を買ったからには、無関係では無いからな、お互い様だ」

「ハハ、そうだぜ。水臭い事は無しにしようぜ、オーウェンの旦那」


「そうか……なら、そう言う事にしておこう。だが、ドウマ、マーサが動ける様に成ったら、手料理をご馳走したいと言っているんだが、どうだ?」

「うむ、そう言う事なら是非、馳走になろう」


「それで、ドウマ、ジム。ヘルマスの奴らは?」

「ヤツ等なら、ほぼ全員始末した」

「ほぼ?」

「始末したヤツ等の魔力結晶を集めるのが面倒だったんでな。下っ端を二人ほど、見逃す事を条件にやらせている。集めた物は、門の前に積み上げる様に言ってあるのだが、マズかったか?」

「いや、構わんさ。そんな下っ端見逃したところで、大して町の不利益にも成らんだろうからな。まあ、そう言う事なら、明日にでも自警団うちの若いのに取りに行かそう」


そして、オーウェンがやや神妙な顔付きに成り続ける。

「それとジム、一つ残念な知らせがある」

「残念な知らせって……何の事だい、オーウェンの旦那……?」

「うむ、それは……」

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