第111話 想定外の動き
オーウェンが納得したかはともかく、理解は得られた。
今はそれで十分だ。
それから、暫くして事態が動き始める。
オーウェンが放っていた偵察が、慌てて戻って来た。
南の廃坑の近くで、ゴブリン共の動きを見張っていた者だ。
無論、ヤツ等を刺激せん様に、ゴブリン共の巣が在る廃坑までは行かず、その手前に潜む様に見張らせておったらしい。
当然だが、ヤツ等の巣がある南の廃坑から町に戻ってくると言う事は、町の南側に辿り着く事に成る。
いつの間にかそびえ立つ、長い土壁に驚いておる。
取り合えず、オーウェンの指示で梯子が降ろされ、その偵察の男が馬をその場に残し、上がって来る。
「オーウェンさん。この壁はいったい……」
「ソイツの説明は後だ。それよりジョエル、何があった?」
「あっ、そうです。ゴブリン共の群れが動き出しました。ですが……妙なんです」
「妙とは?」
「それが、てっきり、真っ直ぐ町に向かって来るのかと思っていたんですが、奴等が迂回する様に、東に向かったんです」
「東だと?ソイツはどう云う事だ……この町の東と言えば、ニーリーの町が有るが、ゴブリン共が襲うには遠すぎる……」
「オーウェンの旦那、まさかとは思うが、ヤツ等、罠に気付いたって事は?」
「それで、町の東側に回り込もうと……まさか!ゴブリン共にそんな知性があるなんぞ、聞いた事が無い」
「今朝戦ったレッドキャップとやらが率いていたゴブリン共は、統率が取れておった。ワシらを罠に誘い込もうとするぐらいにはな……」
「いや、ドウマ。確かにレッドキャップは狡猾だが。それは小規模な戦闘に置いての話だ。何百何千となる様な集団までは、いかにレッドキャップと言えど、指揮できん」
うむ、このオーウェンと云う男、ワシが見た所、中々のキレ者だ。
ゴブリン共を侮って居るとも思えん。
と、すると……何ぞ異変が起きたか、それとも……。
「ともかく、もしこのまま、町の東からゴブリン共に雪崩れ込まれるような事に成っては、折角の罠も、この壁も役に立たん。町が蹂躙されることに成ってしまう。事態を正確に把握する必要が有る。已むを得ん、ワシがヤツ等の群れを見てこよう」
「ドウマ、アンタ一人でか?」
「うむ、その方が動きやすい」
オーウェンは腕を組み暫し考え、確認する様に、ジムに視線を移す。
ジムが頷く。
「そうか、ならアンタに任せよう」
フッ、どうやら言葉以上には、ジムの事は信用しておるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます