第112話 ゴブリン共を先回り

オーウェンとの話もまとまろうとした時、丁度レナード、ギデオン、クライドの三人も駆けつけて来る。

「おいおい、オーウェンの旦那、何だこの壁は?」

「ああ、レナード、コイツの話は後だ。まあ、町の南側を護る壁だと思ってくれ。それよりもゴブリン共が動き出した。ただ、ヤツ等どういう訳か町の東側に回り込もうとしているらしい。ん、ホバートのヤツはどうした?」


「ああ、やっこさんなら、クイーンやらエンプレスやらとはやり合う気は無いとさ。それで、教会の方で、立て籠もる女子供の警護だとさ」

「ハァ~、確かそんな話だったな。已むを得ん」

そのあと、オーウェンが遅れてきた三人に手短に説明し始める。

ともかく、ここの事はオーウェンに任せておこう。


ワシはゴブリン共を先回りする積りだが、その前に、ジムを呼び止める。

「ジム、ゴブリン共の大軍と一戦交える前に、こいつを渡して置く」

「ん、これは……45ロングコルト……って、まさか!?」

ワシが渡した巾着袋から取り出したソレを見てジムが小さく声を上げる。


「うむ、お前さんがオーガを仕留めたワシの魔弾だ。クイーンだかエンプレスだか知らんが、リンドヴルムほどの敵で無いなら通用する筈だ」

「はぁ~……って事は、コイツも旦那が?」

「フッ、人には話さんでくれ。まあ、それはともかく、もし可能なら、ゴブリン共を罠まで誘導する。その時は遠慮は要らん、罠の樽を撃ち抜け」


「良いのかい、旦那?誘導って事は、そのゴブリン共の近くに、旦那が居るかもしん無えぜ」

「構わん。自分で提案した罠の炎に巻かれて、クタバル様なヘマはせんさ」

「ハハ、じゃあ承知したぜ」



三メートルの段差を飛び降り、オーウェンに一言断りを入れ、偵察から帰ってきた男が乗っていた馬を借りて町より南東へと走らせる。

ゴブリン共は大軍、それに徒歩だ。

移動する速度は遅い筈。

偵察の男が急いで、馬を走らせたなら。

ゴブリン共を待ち伏せするには、この辺りが良かろう。


目を瞑り、神経を研ぎ澄ます。

微かに、ヤツ等が行軍する足音が聞こえる。

風に乗って、奴等の匂いも。


目を開け、その方向に目をやる。


人の目には到底見えない距離、そしてまだ夜も明けぬ暗闇の中、舞う砂煙が見えて来る。

「うむ、此処ここからでは良く判らんが、尋常で無い大軍なのは一目瞭然だな」

これ程の大軍、断じて町に入れる分けには行かんが……さて、如何どうしたモノか……。


「ん!?なんだ、アレは……」

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