第113話 ゴブリン共を誘導する何者か

ゴブリン共の集団の先頭より少し前を行くアレは……荷馬車か!?

まさか、あれ程のゴブリンの大軍に、追われているだと。


しかし、どう言う事だ?

町を襲撃しようと、ゴブリン共が打って出た時に、運悪く居合わせた者でもおったか。

それで、その者等を追ってゴブリン共が不自然な行軍を?


いや、それも妙だな。

そんな付いて居らん者が居るか?

そもそも、ゴブリン共の巣は廃坑と聞く。

そんなところに運悪く居合わすなど……と成ると。

「フッ、わざとだな」


あの荷馬車は敢えて、ゴブリン共に追われていると言う事だ。

そして、ゴブリン共を誘導してるのだ。

と言う事は、そんなアホな事を企むのは、ヘルマス一家しか居らん。


もう少し、近付いて様子を見たい。

刀印を結び、時間が経ち、効力の薄まったアモンの魔法陣を再び施す。

そして、隠身かくりみも。

馬をその場に乗り捨て、夜陰に紛れる様に、岩陰から岩陰へと移動していく。


更に、ヤツ等が近付き、様子が見えて来る。

荷馬車の左右にも馬に乗った男達だ。

しかも、その男達は、鞍を付けた無人の馬の手綱を引いておる。


成るほど、息の切れた馬は乗り捨てる算段か。

恐らく、荷馬車の御者も、目的を達すれば、荷馬車を乗り捨て、あの馬で逃走する積りなのだろう。


どうやら、ゴブリン共はあの荷馬車を追って居ると見て間違い無い。

ゴブリン共が追うあの荷馬車の荷は……まあ、簡単に想像付く。

ヤツ等の同胞のむくろに違い在るまい。


それにしても、あの男達は何故そんな事をして居る?

ワシらが町の南側の荒野に罠を張ったからか?

だがしかし、罠の設置が終わったのは日も暮れてからだ。

それに気付いてから、動いたには、奴等の動きが速すぎる。


と、成ると……内通者か……。

何者かは知らんが、ワシらの動きを内通し、ゴブリン共を町の東側に誘導する様に助言した者が居るのだ。


「ハァ~、内通者とは、また面倒な事だ……」

いずれ、あぶり出して、その者にツケを払わせるとして、それよりも先ずは、目の前のこ奴等を如何どうにかせんとな。


さて、如何する?

此処から、銃で馬を狙撃するか。

そうすれば、奴等はゴブリン共の大軍が始末してくれよう……いや、それはマズイな。


男どもは始末出来ても、この位置からゴブリン共が町を目指すと成れば、仕掛けた罠を避けられてしまう。


「フッ、成らば、奴等の手口をそのまま借りるのが早かろう」

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