第67話 廃坑の黒い沼
馬を降り、ゲートへ向かう。
恐らく、そのゲートを閉ざしていたであろう南京錠は、朽ち果て地に転がっている。
「で、旦那、コイツはどうする?」
ジムが持参したランタンを指さす。
「夜襲を仕掛ける分けでも有るまい。
そして、幼少の頃遊び場にしていたと云うジムに先導されて、奥へと向かう。
暫くして、巨大な露天掘りの穴が見えてくる。
結構深い穴だ。
その大穴の奥底に小さな灯りが一つ。
見た所、やはり先客は一人らしい。
「旦那、こっちだ」
ジムに急かされ、後に付いて行くと、朽ち果てた木造の小屋。
その横を、細いスロープ状の道がくねくねと蛇行しながら下に伸びている。
ジムの後に続いて、スロープを降りて数分、
先客の人物がワシらに気付き、ランタンをこちらに掲げ、固まる様に静止している。
今のところ攻撃してくる気配は、見て取れ無い。
近付くにつれ、その人物の影がはっきりしてくる……ん、あの背が低く、小太りの体型……。
「おや……もしかして、ジム?それと……猫の旦那?どうして、ここに……?」
「トマス!?トマスこそ、こんな夜中に何してんだ?」
「ハァ~……何って……ホント、肝を冷やしましたよ。てっきり、ゴロツキ共に見つかったのかと……」
成るほど。
「フッ、どうやら、お前さんとワシらの目的は同じらしい。お前さんも、コイツを見に来たのだろう?」
そう言って、露天掘りの底に広がる、黒い沼に視線を向ける。
「と、するとお二人も……で、猫の旦那、この液体はやはり……」
「うむ、間違いなかろうな」
トマスはこの液体が何なのか、既に感付いておる様だな。
この嫌な匂い間違いない。
「ああ、旦那にトマス、オレにはさっぱりなんだが、この黒い液体はいったい?」
「コイツは原油だ。これを精製すれば石油に成る」
「石油?それって確か、トマスが仕入れたって云うランタンの?」
「ええ、そうです。昼間、お二人と別れた後、町長さんを訪ねて行きましてね。町の復興に付いて入用な物資が有ればとお話ししたんですが……もしかすると、復興も何も、町を捨てるかもしれんと、お伺いしましてね。それで、色々と詳しくお話を伺ったところ、例のヘルマス一家でしたか、彼らと、この廃坑に湧き出た黒い液体の話を聞きまして、それで、もしやと思って見に来たんです」
「こんな夜中にかい?」
「ハハハ、私はお二方と違って、臆病者でして。もし、明るい所で、ヘルマス一家のゴロツキに、顔を覚えられでもしたら厄介な事に成るかもと、それで、こんな夜中に」
「で、トマス。もしコイツが二人が言う、石油だか原油だか言う物だとして、これで、町の財政が助かるほどの物か?」
「うーーん、そうですな……」
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