第66話 ヌアザ第一鉱山

食事のあと、ジェシーに二階にある客間に案内される。

ジムは、以前使っていた自分の部屋が、そのままに成っているらしく、その部屋に入って行った。


客間には小さなベットが二つ。

質素だが、清潔感のある部屋だ。


部屋の隅に背嚢リュックと、ヤツの皮から錬成したずだ袋を置き見下ろす。

「お前さんリンドヴルムと申す名で有ったか。それにしても、三千の精鋭を殲滅するとはな……成るほど、どうりで手ごわかった筈だ」

お前さんの魔力結晶は有効に利用させて貰おう。


さて明日、最後の話し合いだと言っておったが、その前にもう一つ確認しておいた方が良いだろうな。

そのヘルマス一家いっかとやらの狙いとやらを。



マーサも帰り、ジェシーや子供達も眠りに付いた頃、ジムの部屋の扉をノックする。

ほどなく、扉が開く。

「こんな時間にどうしたんだい、旦那」


そう言うジムは既にダスターコートを羽織り、テンガロンハットを冠っている。

「なに、お前さんと目的は同じさ。準備が出来ているなら、早速案内を頼む」

「フッ、ああ、良いぜ」


ジェシーや子供達を起こさない様、そっと階段を降り、家の外へ。

そして、繋いでいた馬に乗り、ジムの案内で町を出て、さらに北へと向かう。


「ところで旦那、コリンが言ってたアレって何の事だい?何と無くなんだが、旦那には心当たりが有る様に見えるんだが」

「フッ、相変わらず感の良い男だな。まあ、おおよその検討はな。だが、焦る事も無い。行けば直ぐに分る事だ」



しばらく進むと、古びた標識が目に入る。

その標識には、『ヌアザ第一鉱山』そう書かれている。


更にその標識の向こうに向かうと、朽ち果てかけた粗末な木製のゲートが見えてくる。

此処ここが、そのヌアザ第一鉱山とやらの入り口なのだろう。

だが、ゲートの向こうには山なぞ存在し無い。

荒涼とした荒野が広がっている様に見える。


町長は露天掘りの廃坑と言っていた。

恐らく山は全て掘り尽くされ、あのゲートの向こうには、その露天掘りの大きな穴が開いておるのだろう。


「ん!?ジム、あれは……」

「ああ旦那、馬だ。どうやら、こんな真夜中に先客がいるらしい。で、どうする、旦那?」

ゲートの横に馬が一頭、隠すふうでも無く、柵に繋がれている。


「不審と言えば不審だが、馬を隠してはおらん。それに、繋がれている馬は一頭。ワシらに敵対する相手とも思えん。今のところはな」

「確かに……じゃあ、気軽に声でも掛けるってのはどうだい?もし後ろめたい相手なら、撃って来るだろうし、そうで無いなら、ソイツの話を聴くのも悪くない」


成るほど、仮に撃って来る様な相手だとして、ワシとジムの二人を相手に、どうこう出来る者など早々居る分けも無い。

「うむ、そうだな、それで行こう」

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