第43話 少々殺し過ぎたか……

「ハッ!」

ペシッ!

バリーが鞭を振るい馬車が走り出す。


ワシも十四年式拳銃をホルスターに戻し、馬に飛び乗り後を追う。

この町の街角や、建物の屋根の上に複数の銃を構えた男達が潜んでいる居る。


ターン、ターン、ターン!

馬車の窓から乗り出す様に、トマスとレオナードが威嚇。

ターン!

ジムは的確に男達を射殺す。


ワシも、鞍のホルスターからスペンサーを抜き、レバーをガシャリと降ろして弾を薬室に送る。

撃鉄を起こして、屋根の上で銃を構える男に狙いをつけ引き金を引く。


ターン!

男はもんどり打って屋根から落ちる。


ん?

後方から蹄の音。

あの馬に乗って居るのは、昨日、ポーカーで負かした残りの二人。

確か一人はホセと呼ばれておったか。


奴らは騎兵用のカービン銃を構え、ワシを狙っておる。

ヒュン!

振り向いたワシの頬を数センチ掠める。

悪くない腕だ、だが当たらねば意味は無い。


スペンサーのレバーを再度操作して、排莢、装填。

撃鉄を起こして、ホセの眉間に照星を合わせる。

ターン!


ワシらを追って来た二頭の馬から、二人の男が同時に落馬する。

フッ、もう一人はジムが射殺したらしい。



更に町の出口を抜けるまでの間に、スペンサーと、弾倉を差し替えた十四年式で五人ほど始末する。

どうにか、無事ニーリーを出る事は出来たが、これで終いと云う分けにも行くまい。


ジムが馬車の後方に回って来て、ワシと馬を並べる。

「旦那、弾切れだ。あとは、コルトに残ってる三発のみ。空いてる薬室に詰める弾も無え。奴ら追って来ると思うか?」

「ああ、恐らくな。お前さん何人った?」

「そうだなぁ、俺が撃ったのはコルトで二発、スペンサーで七発、それだけだ」


この男の場合、撃った弾数とった数はイコールと云う事だ。

つまり九人。


「で、旦那は?」

「ワシもお前さんと同じ九人だ。少々殺し過ぎたか……」


「うん?どう云う事だい旦那」

「奴らも引くに引けんと言う事さ。出してしまった被害、盗賊としての矜持きょうじやメンツ、そう言った諸々が邪魔をして、合理的な判断が出来なく成っておるだろう」

「で、追って来るだろうと……」

「そう言う事だ」


「はぁ~、少し手加減すりゃ良かったかなぁ~」

「いや、そんな余裕は無かったさ」


「しかし、どうする旦那?さっきも言ったが、弾がもう無え。旦那の話だとあと三十人ほどは居るんだろ。さすがに残りの三発だけで凌ぐのは不可能だぜ」

「コイツを使え」

十四年式を抜き、空に成った弾倉を差し替えてジムに渡す。


「おいおい、俺は構わんが、旦那が丸腰に成っちまうぜ」

「ん、ワシが丸腰に見えるか?」

カチッと、軍刀の鯉口を切って見せる。


「ハハッ、確かに、旦那は丸腰じゃねえ。と言うか、むしろ、旦那の場合ソッチの方がおっかねぇぜ」

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