第42話 宿屋の一階、銃撃戦

一階へ向かう階段の先は暗く、人気ひとけは無い。

今のところ、奴らは未だ動き出してはおらん様だ。


だが、油断は禁物だ。

ここから先、乗客を馬車に乗せる迄が一番危険だからな。

今、銃撃戦に成れば、犠牲者を出し兼ねん。


しかし一旦、乗客を馬車に乗せてさえしまえば、奴らも無暗に撃てなくなる。

何しろ奴らにとって、女性客は重要な商品だからな。

下手に馬車を撃てば、その商品が傷つき兼ねない。


そうなれば、奴らの標的は御者のバリーに集中する事に成る。

まあ、バリーには外れくじを引かせる事に成るが、護衛対象が一人に絞られるなら、ワシもジムもやり易い。


キ、キィ。

皆、足を忍ばせて降りるが、階段の木が軋む。


どうやら、ジムが下に辿り着いた様だ。

周りを確認し、安全を確認している。


外に停めた馬車は、隠身かくりみの術が掛かっておるが、乗客達にはさっきその存在を伝えている。

その為、彼らには問題無く認知出来、見える筈だ。


ジムも外の馬車に目をやり、異常が無い事を確認したらしい、階段の下で手招いておる。


そして、バリーも下に辿り着き、モーリスと孫のケイティがそれに続く……刹那。


ガタン!

「キャッ!」


ケイティが暗闇で階段を踏み外し階段を滑り落ちる。

「おっと、大丈夫かいお嬢ちゃん」

幸いにも、ジムが受け止め怪我は無い様だ……だが。


奥の扉が開き、無精ヒゲの男が飛び出してくる。

「おい、テメェそこで何してやがる!」

「いや、なに、チョット夜のお散歩でもと、思ってね♪」

ジムがおどけた風で誤魔化そうとして居るが……。


「ふ、ふざけんじゃねぇ!感付きやがったな!そこを……」

ズドン!

男が銃に手を触れた瞬間、ジムの銃が火を噴く。


「已むを得ん、皆急げ!」

他の乗客たちは忍び足を辞め、階段を駆け下りる。


ズドン!

更に、奥から出て来た男の眉間をジムが撃ち抜く。

ワシも階段を飛び降りる様に、駆け降り、十四年式を抜いてコッキング。

パン、パン!

ワシも、厨房に向かう廊下の角から出てきた男を一人射殺。

もう一発は威嚇だ。


ん?

今ワシがった男、あのウーゴと云う男か。

ワシを恨んでおった様だが、相手が悪かったな。

輪廻の輪に戻り、今度はまともな来世を送るんだな。


「ジム!外だ、馬車を護れ!馬の鞍にスペンサーを差して在る、それを使え!」

「分った!」


バン、バン、バン!

奴らも物陰に隠れ、撃ってくるが、威嚇で撃っておるだけだ。

そうそう、当たるものでは無い。


だが流れ弾で、誰ぞ怪我でもしたらマズイ。

パン、パン、パン!

威嚇を交えつつ、身を乗り出した男を一人射殺。


ターン、ターン!

外からスペンサーの銃声が聞こえる。


振り返り、スイングドアの向こうを見る。

どうやら、皆は馬車に乗ったらしい。

そろそろ、ワシも行くか。


パン、パン、パン!

威嚇に、弾倉に残った残りの弾を撃ち尽くし外に出る。

「ジム!バリー!馬車をだせ!」

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