第45話 殺戮の神楽舞

バン、バン、バン!

闇雲に放たれる奴らの銃弾は、ワシにかすりもし無い。


ワシは、ただひたすら軍刀を振るい、敵を切り裂く。

人馬の手足が、首が宙に舞う。


ワシの足運びが独特の拍子を刻み始める。

前世、名前も思い出せぬその家に、代々伝わる神楽舞。

軽やかに飛び跳ね弾み、勇壮に舞う。


そして、素早く強く敵を切りつける。


これは、その神楽舞の足運びを元に、ワシが生前編み出した秘術中の秘術。

飛び跳ねて切りつけるこの技は、生前のワシよりも、小さくしなやかな今の姿の方が良く冴えわたる。


血しぶきと砂塵が赤く舞い、荒野を紅蓮に染める。


フフフ、自覚はある。

ワシは、血に酔っておるのだ。

森の中で、肉や魔力結晶を求めて獲物を狩っていた時とは違う。

ただ、眼前の敵を殲滅、殺戮する為だけに、軍刀を振るい舞っておるのだ。


ふと、気が付けば、辺り一面に肉隗と化した人馬のむくろが散らばっている。

そして、三人の男が武器を捨て、両手を上げひざまづき、小便を垂れ流しておる。

「こ、降参だ。た、頼む。殺さんでくれ」

バーテンに成り済ましてった、盗賊共の首領の男が懇願する。


「み、見逃してくれ。今まで溜め込んだ金は、ぜ、全部アンタに差し出す」

「見逃せだと?」

フッ、随分都合の良い話だな。


「成らば貴様に問う。貴様はワシらを見逃す気が無かったから、わざわざ此処ここまで追って来たのでは無いか?」

「そ、それは……」


背後から近づくひづめの音。

「旦那……」


背後に目をやる。

「おっと、そんなおっか無い目で睨まないでくれよ、旦那」

「フッ、お前さんか。すまん、少々血に酔った様だ。もう少し声が掛かるのが遅ければ、危うく切り掛かっておったやも知れん」


「おいおい、変な冗談は止してくれ……って、冗談だよな……?」

「ハハ、冗談だ」


「フゥ~、それにしても、惨憺さんたんたる有様だなぁ。馬車の乗客には見せない方が良さそうだ。特に年端も行かないケイティには……」

「そうだな、それが良かろう」


「で、この命乞いしてる三人はどうする?」

「そうだな」


軍刀を携え、三人に歩み寄る。

「わ、分った。こ、こうしよう。俺達を何処かの保安官事務所に付き出してくれ。大人しく裁判に掛かる。そ、それで勘弁してくれ。どうせ、縛り首だ」


「はぁ~、しゃぁ無い……じゃあ旦那、俺は馬車から縄を取って……」

ジムが言い終わらんうちに軍刀を一閃。

三つの首が、上げた両手ごとコトリと地に落ちる。


「だ、旦那!?」

「馬車の乗客は女性客が多い。まして、ケイティの様な子供もいる。こ奴ら悪党共の裁判とやらの為に、危険を冒す分けには行かん」

「はぁ~……旦那の言う通りだ。俺も、まだまだ青いな……」


「いや、お前さんはそれで構わん。わざわざ人を辞める必要も無い」

「じゃぁ旦那は良いのかい?」


「フッ、愚門だな。そもそもワシは人では無いさ」

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