第105話 罠は、滞り無く

銃声は散発的に成り、辺りを見渡すと、ゴブリン共の骸が無数に転がる。

どうやら、この前哨戦の趨勢すうせいは付いたと云う事か。


あとは、残党狩りだな。

ん、そう言えばこ奴の魔銃!?

慌てて、今切り殺した赤頭の骸の傍に転がるソレに目をやり、頭を抱える。

「はぁ~……ツイやってしもうた……せっかくの魔銃を真っ二つに……」

魔銃を手に入れる好機だったのだがな。

まったく、戦いにアツく成る癖は、いい加減に直さんとな……。


「まあ、良い、これでも何ぞ研究の資料にも成ろう。戴いておくとしよう」

それに、どのみちこ奴は弾を撃ち尽くしておる。

これもまた、別途手に入れんとな。



その後、潜んでおったゴブリンの残党を二匹ほど切り殺してジムらと合流する。

「どうやら片付いた様ですね。オット♪」

ズドン!

と、未だ息のあるゴブリンの頭を撃ち抜きながらホバートが、満面の笑みでそう語る。

フッ、今の笑顔は作り物では無さそうだ。


どうやら見た所、皆にけが人は居らん様だ。

中々どうして、この連中腕が立つものばかりだな。

軍人であるレナードや、いかにもな雰囲気の有るギデオンとホバートはともかく、クライドも見かけに寄らず正確な射撃をしておった。


「ともかく旦那、前哨戦は俺たちの勝利だな。それにしても、ゴブリン共に銃をばら撒くなんて、ヤツら面倒な事をしてくれるぜ」

「まったくだ。だがジム、悪い事ばかりでも無い」

「ん、それは?」

「なに、お前さんの器用な戦い方と同じだ。ゴブリン共が持っていた銃は、見た所、質の悪い物が多そうだが、それでも撃てなくはない」

「成るほど、これで少しはこっちも戦力を増強出来るって事か」

まあ、問題は弾薬の方だが……。

今日中にトマスから届かん様なら、已むを得ん、幾分かワシが錬成せねば成らんか。



それから暫くして、樽を積んだ荷馬車が続々と集まり出し、本格的な作業が始まる。

オーウェンも鉱山から此方こちらに来て、作業の陣頭指揮を執る。

因みに、鉱山の方は、マーサが指揮を取っておるらしい。

何とも、女傑だな。


町の南の荒野に原油が撒かれる。

原油の匂いが鼻に突く。

本当なら、原油は樽に詰めたままの方が、罠と気付かれ難いのだが、広範囲に燃え広がらせる為にはこうするしか無い。

オーウェンいわく、奴等の執着心を妨げる程の匂いでは無い、必ず上手く行くとの事だ。

まあ、希望的観測も半分だろうがな。


「ケニー、ジム達が始末したゴブリン共のむくろも、罠の真ん中に積み上げとけ。少しはおびき寄せる効果が高く成るかも知れん」

「はい、オーウェンの旦那!」

うむ、作業は彼に任せておけば問題なかろう。

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