第129話 危うい命

「それと、ドウマ、ジム……」

只でも険しいギデオンの顔が、更に神妙な顔に成る。

「どうした?」


「オーウェン殿の奥方が撃たれた」

「なっ!?マーサが撃たれたって!」

ジムが声を上げる。


「教会で立て籠もっておった皆に、炎龍殿が女帝エンプレスたおした報が流れた直後、そこを護っておった筈のヤツが、もう一人の男と突如銃を抜いて、双子をさらおうとしたらしい。そしてその時、居合わせた奥方殿が庇おうとして、あヤツに撃たれたと」

「で、そのマーサの様態は?」

ともかく、命があるならば如何にか出来る。


「うむ……判らん。儂等はその報を受けて、慌ててヤツ等を追って馬を飛ばしたものでな」


「成らば、スマンが馬を借りたい。もし、未だマーサの命が有るなら、助けられるやもしれん」

「なんと、ドウマ殿それは本当か?」

「まあ、詳しくは話せんが、そう言う魔道具を持っておる」

と、言う事にして置く。


「うむ、承知した、儂の馬を使ってくれて構わん」

「重ねてスマンが、ジムとティナも先に連れて行きたいのだが……」


「そう言うことであれば、クライド、お前の馬を炎龍殿に」

「えーー、爺ちゃん……」

クライドも、不平を言いつつもギデオンに睨まれ、しぶしぶ馬をシムとティナに譲る。


「恩に着る。それと、もう一つ。そこに伸びておるホバートの仲間の男を連行して来てくれ。後で尋問したい」

「うむ、承知した」


「ジム、急ぐぞ」

「分った、旦那」



少々遠回りには成るが、町の東側へと向かう。

ワシの錬成した壁が、今となっては邪魔だ。


「ジム、分って居ると思うが、魔法でマーサを治癒する」

「ああ、旦那がマーサを治療している間、誰も近付け無きゃ良いんだな。でも、本当に如何どうにか成るのかい、旦那?」

「うむ、実は話しておらんかったが、オーガとやり合った時、レナードは首をへし折っておった」

「はぁ!?首って……」

「少々、危うい所であったが、まあ、命さえあればどうにでも成ると言う事だ。それと、分っていると思うが、レナードには言わんでくれよ」

「ハハ、分ったぜ」



教会の前で馬を降り、その中へ。

ジムも、眠る様に気を失っているティナを抱いて、後に続く。


教会の中には、泣き崩れる女性と、彼女を慰める住民たち。

その中にジムが駆け寄って行く

「ジム!えっ、ティナ!」

泣き崩れていたジェシーが我に返り、ティナを抱きしめる。

「ティナは意識を失っているだけだ。だが、スマン……バーニーは連れていかれた」

ジムが、ジェシーに謝る。


「ジェシー、さらったと言う事は、直ぐに命を取る気は無いと言うことだ。必ず、ワシとジムが助け出す」

そして、エドのかたきもな。

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