第128話 ヤツが内通者か
「ジム、
ジムが、ティナを膝に抱いたままスペンサーを構える。
「……無理だな、スコープが有れば或いは……ってとこだ。試しに撃ってみるかい?」
「いや、止めておけ」
もし、ワシの嫌な予感通りなら、下手に外すと取り返しが付かん事に成りかねん。
「しかし、なんでアイツらティナを……」
朝焼けの中を地平線に消えていくホバートを、已む無く眺めていると、背後から蹄の音。
更に二騎、此方に走ってくる。
ギデオンとクライドだ。
二人は馬を降り、
「どうやら、お嬢ちゃんの方は、ドウマとジムが助けたか」
「ギデオン、お嬢ちゃんの方と云うからには……やはり?」
「ああ、この子の双子の兄も
「ちょ、ちょっと待ってくれ。何で、ティナとバーニーが
「それは、炎龍殿が驚異だからじゃよ。確かにドウマも驚異なのは、ホバートも承知だろうが、手を出す身内が居らんではな。だから、まずは炎龍殿の御身内を狙ったのじゃ」
「なんで、ホバートの野郎がそんな事を……?」
「ソイツはジム、ヤツがヘルマス一家の内通者だからだ。それに、ヤツはワシらに
「なっ……じゃあヤツが!」
「ほう、さすがはドウマ、気付いて
「うむ、ヤツが、とは気付かんかったが、ゴブリン共は町の東側に回り込む様に誘導されておった。さすがに、内通者でもおらん限りは動きが速すぎる」
「ときに、ギデオン、お前さんらは前回の襲撃の際に駆り出されたと言っておったが、ヤツもヌーグからの同行者か?」
さっきヤツが放ったのは、まず間違いなく
だがヌーグで召集を受けてヌアザに来たと成れば、エドを殺害して一旦ヌーグに向かって召集を受けたとは考え難い。
そうなれば、
「いや、ドウマ……。今考えれば妙な話だが、ヤツとはヌアザへ向かう道中で合流した。確か、ヌーグ砦へと向かう三差路辺りでキャンプして居った。急ぐ儂等に声を掛け、ヌアザの惨状を聞いて、同行すると言ってな……」
成るほど、ヤツは砦に向かおうとしたエドの他に、ヌーグへ助けを求めに行く者が居た場合を考えて待ち構えておったと云う事か。
そして、万が一の場合はそこでヌーグからの援軍に合流して、自然な形でヌアザに潜り込むと……。
「何とも、用意周到な事だ」
そう呟きながら、ジムと目を合わせる。
ジムが頷く。
どうやら、エドの
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