第127話 いかづちの魔銃

「はぁ~、旦那それで、オレに銃を構えさせたってのか……」

「ははは、まあ許せ、どうせお前さんは、炎龍の二つ名を持つほどの男だ。ならば、女帝エンプレスを吹き飛ばす程度の偉業が一つ増えたとて、大した事はあるまい」


「だけど旦那、リンドヴルムを仕留める程の魔弾なんて、聞いた事無えぜ。どう言い訳すりゃ……はぁ~」

「うむ、だが、あそこに倒れておるのは、リンドヴルムでは無い。あくまで、お前さんが吹き飛ばしたのは女帝エンプレスと言うことだ。お前さんが上手く、オーウェン達を言い包めてくれる事を期待しておる」


まあ、上手く誤魔化せん様なら、その時はその時の事だ。



暫くして、町の方から騎影が一騎……いや、二騎こちらに駆けて来る。

遠目に見える、あの顔は……見知った歪んだ笑顔。

「ホバート?アイツ、今更何しに……」

ジムが呟く。


ホバートは小脇に何ぞ布に包まれたモノを抱えて、疾走してくる。

どうやら遅れて、馬を駆るもう一騎もだ。


ん!?

ホバートが、右手をワシらに向け伸ばす。

その右手に握られておる物は銃、そして、ワシのヒゲがチリチリと……。


マズイ!

咄嗟に、ジムを引っ掴んで、岩陰に飛ぶ。

刹那、ズバーン!と、閃光と雷鳴が轟く。


なに、いかづちの魔銃だと!

「あ奴!」


ホバートの馬が真横を駆け抜ける。

ホルスターの十四年式の弾倉は空だ。

ワシは、軍刀を抜き、横のジムも銃に手を掛ける。


飛び出そうと、岩陰から頭を出した瞬間、ホバートの後方から向かって来るもう一騎が目に入る。

その男の抱えている、布が一部ハラリとめくれ、見覚えのあるブロンドがたなびく。


まさか、こ奴等!

「ジム!ヤツは、放って置け、こっちが先だ!上手く、受け止めろよ!」

「えっ、旦那!」


騎馬とすれ違いざま、馬の後ろ脚を切り飛ばす。

「う、うわっ!」


馬が横転し、男が投げ出される。

そして、その男が小脇に抱えていた者も宙を舞う。

「ジム!!」


ジムも咄嗟に、状況を把握したのか、その人並外れた瞬発力で、その投げ出された少女をどうにか受け止め、地面との衝突を防ぐ。

「痛つっっ」

少々、不自然な体制で受け止めたせいか、ジムが呻く。


「ティナ、ティナ!」

ジムが、自身が受け止め助けた姪に声を掛けるが、反応が無い。


二人に歩み寄り、そっと、ティナの首筋に指を当てる。

脈は有る。

「心配無い、気を失ってるだけだ」


それにしても……あ奴。

ホバートが走り去った方に目をやる。

既に、点の様に見える。


確か、奴も布に巻かれた何かを抱えておった。

嫌な予感が頭をよぎる……。

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