第130話 不摂生のお陰?
ジェシーは涙でぬれた顔を上げ、震える様に声を振り絞る。
「ジム……マーサが……」
「大丈夫だ、旦那の魔道具で、どうにか成る」
ジェシーに頷く。
「で、そのマーサは?」
「ジム、ドウマ、こっちだ!」
教会の奥からレナードが駆け寄って来る。
「マーサは神父の部屋に寝かせてるが……手の施しようが無い程の重傷だ……恐らく、あと数時間と持た無え……」
「と言う事は、未だ生きてるって事だな!」
「ああ、ジム。だが……」
「ともかく、案内してくれ。ワシの魔道具でどうにか出来るやもしれん」
「……ああ、分った」
レナードの表情は硬い、魔道具を使ってと話しても懐疑的な反応だ、それ程の重傷と言う事だろう。
彼の案内で、ジムと二人、神父の部屋へと向かう。
そして、その扉をノックして中に入る。
部屋の中には、奥にベッドが有り、その横で
その他には、神父と町長それと、医者らしき男性が一人。
「ん、ドウマさん。それにジム……ジム、落ち着いて聞いてくれ、バーニーとティナが……」
町長がジムにそう声を掛ける。
「ああ、知っている。ティナは助け出した」
「そうか……で、バーニーは?」
ジムが首を振る。
「バーニーは後で必ず助け出す。だが今はマーサが先だ、マーサの様態は?」
今度は町長が首を振る。
「もう、長くは持たんらしい……」
そう、言葉を無くしている町長に代わって、医者が続ける。
「残念ですが、只の銃では無く魔銃で撃たれたと思われます。銃創の様な物は無いのですが、全身にまるで雷にでも打たれた様な重度の火傷を負っています」
うな垂れるオーウェンの背中越しに、ベッドに横に成っているマーサを見ると、身に着けている服は、ボロボロに焼け焦げ、皮膚が見て取れる顔や腕は、赤黒くはれ上がり
ヤツのライトニングキャスターとやらに撃たれたか。
「マーサさんが、即死を免れたのは、ふくよかな体系をされておられたからでしょうな……」
「ハハ、日頃の不摂生のお陰で、どうにか助かったてか……だが、結局助からんなら同じ事だ……
「オーウェンの旦那、未だ諦めるのは早いぜ。旦那が持ってる魔道具でどうにか助かるかも知れ無え」
「魔道具か……。それならさっきから、そこの医者が何度も試したさ。トマスが送ってくれた物資の中に、医療魔道具も入っていたからな、だが……見ての通りさ」
「私が使った医療魔道具は、決して安物では有りません。そのトマスさんと仰る方が、気を利かせてくれたのでしょう。市販されている医療魔道具の中では最も高価で入手が困難な物でしたから。もし、あれ以上の物と成ると、軍や政府が要人の治療用に備蓄しているレベルの物と成りますが……さすがに、一般庶民の手に入る様な物では有りません。それも、マーサさんの息があるうちにと言うのは、難しいかと」
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