第99話 レッドキャップ

「クライド、行くぞ」

「え、爺ちゃん?」

ワシの言葉を聞いて、老兵は悟ったのか孫を引き連れて、ゲートの外へと向かう。


「ん、旦那、オレ達は手伝わ無いのか?」

「オーウェンが言ってったろう。ゴブリン共は大規模な襲撃の前に、斥候を出すと」

「成るほど、その斥候に邪魔されたら、一大事って分けか。確かに、ここも罠の場所も町の外だからな、下手をすると作業している皆に被害が出る」

「そう言う事だ」



廃坑のゲートを出て馬に跨り、町の南側へと向かう。

その、斥候が出るとすれば、南側の可能性が高い。

それに、ジムの言った通り、作業の邪魔をさせたくは無い。


ん?

ワシとジム、レナードの他にもう一騎。

「お前さん、ゴブリンとは戦わんのでは無かったのか?」

「私が戦いたくないのは、クイーンとエンプレスだけですよ。ヤツらが出て来るまでは。お手伝いさせて頂きますよ」

相変わらず、不自然な笑顔でホバートがそう答える。


まあ、良かろう。

戦力は一人でも欲しいからな。



ワシの油田のある廃坑は、町の北に位置している。

一旦、町を経由して南の方へ向かうと、町の南の出口付近、何やら慌ただしい雰囲気だ。

「何か有ったか……」

「ああ、その様だぜ旦那」


ジムが向ける視線の先、一騎こちらに駆け寄って来る。

見知った顔だ。

「ケニー、何か有ったのか?」

「ジムさん、それとドウマさん、大変です。ゴブリン共が……」


「ゴブリンって、もう攻めて来たのか……それで、けが人は?」

ジムが慌てた様子で問いかける。


「いえ、ジムさん。未だ攻めては来ていません。どうも、こちらの様子を遠巻きに伺っている様なんです」

「こっちを伺ってる?ゴブリンの斥候にしてはえらく慎重だな……」

「それがどうも、赤い頭が見えたとか。俺は見て無いのですが、見張りに立ってたヤツがそう言ってます」


「赤い頭だと……レッドキャップか!」

レナードが驚きの声を上げる。


「ん、レッドキャップとは?」

「ああ旦那、レッドキャップと言っても、別に帽子を被ってる分けじゃ無え。頭髪が赤くて、オカッパ頭してるから、そう呼ばれているんだ。ゴブリンの変異体で、極たまにゴブリンの中に生まれる知性の高い個体さ。レッドキャップの居る群れは、妙に統率の取れた動きをする。結構厄介な相手さ」

「炎龍殿に付け加えるなら、ギルドではレッドキャップの居る群れの驚異度は2ランクアップします」

ホバートがそう付け加える。


「ほう、ならは、逆に今始末しておけば、この後の大規模な襲撃の対処が少しは楽に成ると云う事か」

「ハハハ、成るほど確かに、旦那の言う通りだな」

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