第160話 【ジム、潜入】 騒ぐんじゃ無えぜ

部屋の中は、北側の窓と東側の窓がぶち破られ、その窓の下に、見覚えのある死体。

アレは門の所で、旦那に頭を吹き飛ばされた奴等じゃ無えか……。


ハハ、成るほど、旦那、あの死体を放り込んで騒ぎを起こしたって事か。

まあ、ソイツは良いとして、問題は中の生きてるヤツ等さ。


ひい、ふう、みい……ショットガンを持った男が三人。

恐らく、念の為、旦那が仕掛けたこの部屋に見張りを置いたって事だろう。


それにしても、三人か……。

さすがに、音も立てず、ナイフ一本で三人同時に仕留めるってのは、無理だな。


しゃぁ無え、他を当たるか。

そっと、ドアを閉じる。


ん?

別のドアの向こうに気配。

このドアは、屋敷の東側の出入り口。

こっちにも念の為、見張りを置いたってことか。


それにしても……妙だな、用心深く屋敷の東側に見張りを配置させる割には、西側は無防備だったぜ。

ん、そうか!

さっきオレが絞め殺した男が、その西側の見張りに立つ筈だったって分けか。


ま、そんな事はどうでも良いぜ。

それより、こっちの見張りは何人だ?


そう、ドアを開いて、外を確認しようとした刹那、激しい銃撃音。

咄嗟に、身を屈めて様子を伺う。

銃撃音は外からだ、多分、旦那とホバート達がやり合ってるんだろうぜ。


屋敷の中は取り合えず変化は無え。

さっきの部屋の連中と、外の見張りに少し慌てた気配が有ったくらいだ。


で、気を取り直して、見張りが立っている出入口のドアをそっと薄く開ける。

どうやら、こっちは二人……。


ま、どうにか相手出来そうだな。


ホバートのナイフを手に取り、シースから抜き放つ。

ソイツを、右手で逆手に持ち、薄く開けたドアから滑り込む様に音も無く外に出る。

そして、右側に立つ男の背後に立つ。


情報を聞き出すにしろ、一人は邪魔になる。

恨みは無いが死んでもらうぜ……ん?

そうでも無えか、コイツ等への恨みはテンコ盛りだぜ。


そっと、ナイフを持った右手を振り上げ、躊躇ためらう事無く振り下ろし、首の後ろに突き刺す。

先ずは、一人!


すかさず、ナイフを抜き取り、刃に血の滴るまま隣の男の喉元に突き付け、背後から左手を廻して、騒がれない様に口を塞ぐ。

「騒ぐんじゃ無えぜ、声も出すなよ」

そう、男の耳元で囁く。


「オレの言ってる事が分るか?」

一応、確認だ。

もしかすると、未だ旦那の魔法で、コイツがオレを認識出来て無えかもしんねえ。


すると、男が小さく頷く。


「オレの質問に答えろ、いいか?」


もう一度、男が頷く。

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