第159話 【ジム、潜入】 物色

男の死体を引きずって、一旦廊下を戻る。

そしてさっきの、ホバートの声が聞こえて来た部屋の中に男の死体を隠す。


此処ここなら、まず当分見つかる事は無え。

何しろ、この部屋のあるじは、多分戻って来る事は無えからな。


ん!?


屋敷の中の気配が慌ただしくなって来た。

そのまま、ホバートの部屋に潜んで、様子を伺う。


暫くして、その気配がゾロゾロと屋敷から出て行くのが分る。

恐らく、旦那の誘いに乗ったって事か……。

屋敷から消えた気配は、結構な人数だ。

助かるぜ、これで動きやすく成る。

また出会いがしらってのは、心臓に悪いからな。


で、ホバートの部屋を出る前に、絞め殺した男と、部屋の中を物色する。

まあ、いつもの癖さ。


それに、まだ銃をぶっ放す分けにはいか無え。

そうなると、何か使えそうな得物が欲しい。


床に転がる男は……ハァ~、めぼしい物は持って無え。

だがまあ、男の持っていたコルトのベビー・ドラグーンは使えそうだ。

パーカッションで、五発しか弾が入ん無え小さな銃だが、念の為に隠し持つには丁度良いぜ。

ソイツを戴いて、腰の後ろに差しておく。


それで、部屋の中はっと……。

小さな革のズダ袋がある。

こいつは、ホバートのか?


当然、中を開けて物色。

ヒュー♪と口笛を吹きそうに成って、危うく思いとどまる。


良いナイフじゃ無えか♪

革のシースに収まったナイフを抜く。

刃渡りは、四インチってとこか。

柄は鹿の角……じゃ無えな、何か分からねえが、恐らく魔物の角だ。

握り具合も悪く無え。


ま、有難く戴いとくとするぜ♪



さて、問題は、バーニーが何処に居るかだ……。

闇雲に探し回ってもらちが明か無え。

適当な奴を捕まえて聞き出すのが早いか……って、だったらコイツを殺すんじゃ無かったぜ。


ま、良いさ、聞き出す相手は、直ぐに見つかるさ。



ホバートの部屋を後にして、再び廊下に出る。

今度は、更に慎重に進む。


この屋敷の中は結構部屋数が多い。

此処ここは元々牧場だ、恐らく、牧童達の部屋かなんかだろう。

だが、その割には、人の気配がし無え。

多分、旦那の陽動に釣られて、ほとんどの手下共が出払ったってことだろうが……それにしても、旦那どんな手で誘き出したんだ……?



で、人の気配を感じないまま、屋敷の反対側まで来ちまった。


ん?

左手の部屋から気配を感じる。

そっと、そのドアのノブに手を掛け、うっすらと中を覗ける程度、隙間を開ける。

まあ、気付かれちまったら、その時はその時さ。


取り合えず、気付かれた気配は無え。

その隙間から中を覗くと……なんだありゃ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る