第158話 【ジム、潜入】 嫌な感触だぜ

折角、旦那が向こうで騒ぎを起こしてくれてるんだ、今の隙に中に。

とは言え、こっちでも、窓を突き破るなんて事をしたら、意味が無え。


このドアから、堂々と入らせて貰うぜ。

で、ドアノブに手を掛けると……ハァ~、鍵が掛かってるぜ。

まあ、当然だわな。


で、どうしたモノか……やっぱ、窓を突き破るか……ん!?

屋敷の前に、朽ちた物置が一つある。

取り合えず、漁らせて貰うと、丁度良い感じの針金だ。


ソイツを持って、再びドアの前に。

で、鍵穴に針金を差し込んで……。


カッチャッ。


フッ、昔はレナードと二人で、兄さんやオーウェンの旦那に良く叱られたが、ガキの頃に悪戯はしておくモンだぜ。

芸は身を助くってね♪


ドアをそっと開け中を覗く。

人の気配は無い。


滑り込む様に、気配を消して中に入る。


左手に、ドアがある。

多分、さっきホバートが居た部屋だ。

取り合えず、今は此処ここには用は無え。


廊下を進むと、その廊下が十字に重なる。

こういう所で、出合頭って事に成ったら厄介だ。


慎重に、左側の壁を背に左右を覗き込む。

右手には気配は無い。

で、左手には……出会いがしら、髭面ヒゲヅラの男と目が合う……ヤバい!


刹那、緊張が走り、集中力が増す。

いつもの感覚だ。

こんな時オレは一瞬、周りの時が止まって見える。


それにしても、オレが油断して気配を読み間違えたか、コイツが上手く気配を断ってたか、それとも、元々影の薄い奴か……。

そんな事はどうでも良い、どっちにしろ、しくじった!

旦那の話じゃ、隠身かくりみって魔法は、正面に立たれてもマズイって話だった。


男が、呆然と目をしばたたかせ、眉間に皺を寄せている。

未だ、旦那の魔法が解けた分けじゃ無えみたいだ。


昨夜、隠身かくりみの掛かった旦那の後を付けた時、旦那の声を聴いても、直ぐにハッキリと見える様に成った分けじゃ無い。

段々と、ぼんやりと見えて来た。

コイツもあんな感じか?


だったら!


咄嗟にそう判断し、その髭面ヒゲヅラの男を引きずり込む様に羽交い絞めにして、腕で首を強く締め上げる。

「ウ、ウゥゥ……」


暴れられても厄介だ、仕方が無え。

そのまま捻じる様に腕に力を入れる。


グキッ!


男の腕が、力なく垂れさがる。

銃で撃ち殺すのは、まあ、慣れたモンだが、絞め殺すってのはな……別に初めてって分けじゃ無えが、まったく、嫌な感触だぜ……。

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