第161話 【ジム、潜入】 悪いな、こっちも余裕が無えんだ
「バーニーは……
男の口を塞いでいた手をどけると、男が話し出す。
「に、二階に居る。階段を昇って突き当りに在る部屋だ……」
「で、見張りだか護衛だかは?」
「ボ、ボスとその息子のラルフってのと……ジャ、ジャコビー・ゴダードって腕利きの殺し屋が……そ、それと、他にも後二人ほどだ」
チッ、五人も居るのかよ……。
こっそりと救い出すって、分けには行か無えかもな……。
いっその事、そのドアを蹴破って、全員撃ち殺すか……だが、下手に撃ち合いに成れば、バーニーに流れ弾が当たるかも知れ無え。
それに、ヤツ等が咄嗟に、バーニーを撃ち殺さ無えとも限ら無いえ。
ともかく、まだ、旦那の魔法は解けて無え。
今、羽交い絞めにしてるコイツ以外にはな……。
旦那の魔法を信じて、どうにかその部屋の中に忍び込んで、後は成る様に成れってとこか。
「最後に、もう一つ質問だ。他に屋敷の中に残ってるヤツ等は?」
「そ、そこの部屋の中に三人。あ、後は、西と北と南にそれぞれ、見張りが一人づつ……そ、それだけだ」
って事は、さっきの部屋の三人と、北と南に一人づつか……。
取り合えず、バーニーを助け出すまで、下手に騒ぎを起こす分けには行か無え。
屋敷の一階の連中は放って置いて、二階に行くか。
「ま、とにかく、参考には成った」
「じゃ、じゃぁ、見逃して貰えるんだな……」
「そうだな……取り合えず、礼は言っとくぜ!」
そう言いながら、男の口元を押さえ、同時にナイフの刃先を喉元に差し込む。
「ウッ!」と小さく呻き声を上げ、羽交い絞めにしている男の体は痙攣し、力無く崩れる。
やっぱり、嫌な感触だぜ……。
「悪いな、こっちも余裕が無えんだ」
下手に
甘さは禁物だ。
男の服で、ナイフの血を拭った後、二つの死体を壁際に寄せる。
さっきの部屋のヤツ等が気付くかも知れ無えからな、まあ念の為さ。
そして、再び屋敷の中に戻り、そっとドアを閉め廊下を戻る。
さっき、絞め殺した男と鉢合わせした辺りだ。
確か、二階に上がる階段が有った筈だ。
古い建物だ、階段を踏みしめる度に、小さく木が軋む。
慎重に、その階段を上がって行く。
そして、昇り切った所、廊下が真っ直ぐ伸び、目の前に部屋の扉が見える。
その向こうに人の気配もある。
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