第92話 廃坑で錬成、迎え撃つ準備

ワシは一人、馬に乗り廃坑へと向かう。

標識が見えて来る。

『ヌアザ第一鉱山』

昨日、町長と交わした契約では、既にこの廃坑と油田はワシの物と成っておる。


ゲートの前に馬を繋ぎ、その中へ……ん!?

おもむろに、ゲートの前に落ちている、朽ち果てた南京錠を拾い上げる。


「そう言えば、鍵をかけておらんのは、不用心だな」

地面に小さな魔法陣を描いて、その中に南京錠を置く。

そして、魔法陣に魔力を流して錬成。


魔法陣が発動し、南京錠が一瞬光って、そのまとっていた錆びが光の粒子と成って弾けて消える。

「うむ、これで良かろう」

新品同様に成った南京錠を拾い上げる。

「うむ、しかし鍵が無いな……ま、後で魔力結晶からでも錬成するか」


ともかく此処ここは錬成するには人気ひとけが無く、もってこいの場所だ。

ここに来たのは、幾つか錬成せねば成らんものが有るからだ。

ま、単純に弾薬が既に心もとない。

大と中の刻印の弾倉は未だ有るのだが、小の弾倉が今十四年式に差してある物を含めあと二つしか無い。

盗賊共相手に結構、小の刻印の弾薬を使ったからな。


ハルファスの魔法陣を元にワシが生み出した弾倉用の錬成陣を描き、無色の魔力結晶の欠片を置き錬成。

それを何度か繰り返し、小の弾倉を補給する。


便利なものだ。

弾薬の補給が、錬成で済むのだからな。

この世界の軍隊とやらがどの様な物かは知らんが、この様な芸当が知られれば厄介な事に成るだろう。

人前では自重せねば成るまい。


次に錬成するのは、45ロングコルト。

勿論、わざわざ錬成するからには普通の物では無い。

ジムがオーガを射抜いたあの銃弾と同じ物だ。


どうやら、これ程の強力な破壊力を持つものでも、この世界では魔弾と認識され、常識の範疇はんちゅうにある。

成らばジム用に幾つか錬成し、渡して置けばいざと言う時の備えにも成ろう。

余人ならばともかく、ジムならば信用できる。

不必要に悪用はすまい。


本来であれば念の為、襲撃に備えオーウェンやギルドのガンスリンガー、それに町民に配る通常の弾薬も錬成したいところだが、あまり派手にやり過ぎると、入手経路をいちいち説明せねば成らん様に成る。

まあ、それも面倒だ。

今は自重しておこう。

トマスにも発注してある。

それが届けば、どうにか成るものだからな。


さて、最後に錬成するものだが……コイツの錬成が、此処ここに来た最大の目的なのだが、さて、何処に錬成するか……。

少々、場所を取るのでな。


「うむ、あそこが良かろう」

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