第14話 出立、生まれ故郷?

「さて、そろそろ出立するか」

この地に生を受け、早四十五日……住み慣れたとまでは行か無いが、この地を離れて南にある街道へ向かう事にした。


テントや椅子、ランタンなど錬成した物で、持っていくにはかさばる物は全て土に還した。

必要なら、また錬成すれば良いだけだからな。


問題は、ワシが錬成した物で無い物だ。

つまりは、ワシの卵の殻と、散々狩をしてコレクションした魔力結晶。


精霊結晶に付いてはワシの卵の殻以外、今のところ見たことが無い。

今後、手に入れる事が出来るか不安だからな、出来れば全て持っていきたいのだが、薄いとは言え結構な量だ。

「仕方がない、半分置いていくか」


魔力結晶は狩で集めたものだ。

こちらは、替えが効きそうだが、色付きは貴重だし機会が有れば研究したい。

「色付きは一通りの色の物と、無色の物も当面不自由せん程度には持っていこう」


錬成した背嚢リュックに、精霊結晶と魔力結晶、そして十四年式の弾倉を幾つかと、魔物の干し肉をひと固まり詰める。

「満杯だな。まあ、良かろう。他に持っていくものも無いからな」


さて、残りの精霊結晶と魔力結晶だが、このまま放置して行く分けにもいくまい。

いつでも回収出来るように何処かに隠して置きたいのだが……。


「うむ、あそこが良さそうだ」

環状列石から、少し離れた所にそびえ立つ常緑樹の木の根元がウロに成っておる。

此処なら申し分無かろう。


ウロの中に残った精霊結晶と魔力結晶を入れ、何重にも隠ぺいの結界を施す。

まあ、念には念を入れてと言う事だ。


「では、参ろうか」

背嚢リュックを背負い、南に向け歩き出す。



道中、狩をしながらの道程と成る。

一応干し肉は背嚢リュックの中に有るが、森から出た後の事が有る。

この森にいる間は食料に困る事は無さそうだが、先日森の出口を見た限りでは、街道の反対側は何もない荒野が広がっていた。

もし、万が一荒野を彷徨う事にでもなれば、最悪飢え死にと言う事も有り得るだろうからな。


出立した初日の夕刻、角の生えたウサギを銃で狩り、もうしばらく進んでキャンプを張る。

僅かに差し込んでいた木漏れ日も入って来なく成り。

夜目の効くワシですら辺りが見え辛く成って来た。


已む無くウィルオウィスプを召喚し、その明かりでウサギの魔力結晶を取り出し、皮を剥いで捌く。

そして、落ちていた木の枝に串刺しにして、錬成した塩をまぶして、ウィルオウィスプの火で炙る。


召喚したウィルオウィスプは、日頃の訓練の成果も有って、何とかワシの頭より一回り大きい程度にまで抑える事が出来る様には成った。

まあ、焚き火替わりには丁度良い大きさだ。


ウサギの肉に程よく火が通り、口に運ぼうとしたその時、メキッと近くで小枝が折れる音。

かすかだが気配を感じる。

その微かな気配には、強い殺気が含まれておる様だ。

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