第155話 【ドウマ、陽動】 混戦

ヤツの銃が雷鳴を轟かせる刹那、咄嗟に左に飛込み、今度はワシがヤツの手下の一人を盾にし飛びずさる。


閃光がその男を飲み込むと、肉の焦げる嫌な匂い。

男は黒焦げに成って、恐らく絶命して居る。

仮に生きておったとして、もう助からんだろう。


更に、ワシのヒゲが次弾を告げる。


厩舎の中を縫う様に走りながら、別の手下を一人引っ掴んで距離を取る。


ズバーン!


その男もワシの代わりにいかづちを受け絶命する。

ん?

この男は、それ程焼け焦げておらん。


どうやら、このいかづちの魔法は、距離によって威力が代わるか……。

いや、それだけでは無い、傍にいた二人も倒れておる。

恐らく、いかづちが枝分かれして、こ奴等にも当たったのだ。


その二人は死んではおらん様だが、何とも端迷惑な魔銃だ。


一旦柱の影に隠れてホバートを見る。

成るほど、そう言う事か……ヤツが更に次弾を撃って来んのに違和感を感じたが、弾を込めておる。

それも、手のひらに収まるほどの銃だ。


バーニーをさらう際に、ワシらに撃ってきた時は気付かんかったが、ヤツの魔銃は上下二連のレミントンデリンジャーか。

どうりで、ヤツの持つ四挺のスコフィールドからは魔力を感じ無かった筈だ。

ワシ等の前では、あの小さな魔銃を何処どこぞに隠し持っておったのだろう。


バン、バン、バン、バン、バン!


さすがに残りの手下共も、我に返ったのか、撃って来る。

残っておるのは、ホバートを除けば五人。

内三人がワシに、二人がホバートに銃口を向ける。

どうやら、ホバートも、自分達の味方では無いと、ようやく気付いたか。


ズバーン!

ヤツの魔銃が再び雷鳴を轟かせ、ワシが身を隠しておった柱を砕く。

その刹那、その柱が支えたおった屋根が崩れ、その降り注ぐ瓦礫を横っ飛びにかわし、同時に軍刀を左手に持ち替えて、咥えた居った十四年式を右手に取る。


ズバーン!

パン、パン!


ヤツの魔銃とワシの十四年式の銃声が重なる。

閃光がワシの頬を掠め、ワシが放った八ミリ南部もヤツの肩を掠める。


バン、バン、バン!

体勢を崩したワシに、手下共の銃撃。

当然、当たるわけが無い。


パン!


十四年式の弾倉に残る一発を放って、一人始末し、左右に手下共の銃弾をかわして間合いを詰め、軍刀を一閃。

二つの首が宙を舞う。

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