第11話 十四年式拳銃
魔法陣と格闘して暫く。
集中が途切れそうに成りながらも、何とか形が定まって来た。
「この辺りで……良いだろう」
徐々に魔法陣に流す魔力を押さえていく。
そして……。
「ふ~、完成だ」
魔法陣の中央には、一振りの刀。
鞘に収まっている外観はサーベルだ。
柄の部分が、両手で握れるようにやや長めに錬成してある。
拾い上げ、鞘から抜き放つ。
その刀身には波打つ刃文。
サーベル
つまりは、軍刀だ。
「中々見事ではないか」
先ほど仕留めた獲物で試し切りしてみよう。
スパッ!
何の抵抗もなく、胴体を切断した。
日本刀の刀身は、折れず、曲がらず、よく切れる。
錬成し損なって出来た山刀とは訳が違う。
いや、それだけでは無いな。
やはり、精霊結晶から錬成した事も大きいだろう。
「うむ、これならばアレを錬成しても、強度は問題なかろう」
再び、魔法陣を描きなおし、小さな精霊結晶の欠片を中央に置いて錬成する。
今度はさらに慎重に、正確に、思い浮かべる物と寸分違わぬ様に……。
錬成を終え、魔法陣の中央に転がる金属の筒を拾い上げ、筒の中を確認。
六本のらせん状の溝が刻まれている。
「どうやら、いけそうだな。だが、部品単位での錬成に成る。数日掛かるか」
それから数日、狩りにも行かず、錬成と休息を繰り返す。
精密な錬成が必要だ。
それだけ神経をすり減らす。
そして、獲物の肉も尽きて来た頃、
部品と言っても、これは消耗品だ。
在庫が限られる精霊結晶ではなく、魔物から採取できる魔力結晶を使おう。
一つずつ錬成するのは簡単なのだが、それでは面倒だし、今後の事を考えると、それ用の魔法陣を編み出した方が効率的だ。
描き上げた魔法陣に魔力を流す。
魔法陣は複雑だが、精霊結晶では無く魔力結晶を使った錬成。
比較的魔力の操作は楽に感じる……いや、そう感じるのは魔力操作に慣れて来たからか。
錬成が終わり、魔法陣の中央に横たわる、やや縦長で箱状の部品を手に取り、ここ数日掛けて錬成し、組み上げたそれのグリップに差し込む。
「うむ、しっくりくる。以前愛用していた物と変わりない。一発試してみるか」
コッキングノブを引っ張って、弾を薬室に送る。
安全装置を外して、五十メートルほど離れた木の幹を狙ってトリガーを引く。
ズドン!
想像していたよりも遥かに大きい銃声。
メキメキと音を立てて、標的にした木が倒れる。
「うーむ、威力が高すぎる。魔力結晶の大きさを間違えたか」
手にしている銃に目を移す。
十四年式拳銃。
ワシが生前、最後に愛用していた銃だ。
先ほど錬成した弾倉は、弾薬が八発装弾された状態で実体化させた。
まあ、弾倉と弾薬を分けて錬成した方が簡単では有るのだが、イチイチ一発づつ錬成し、弾倉に装填するもの面倒なのでな。
それと、弾倉自体も空の物は捨てて行ける様に、精霊結晶ではなく魔力結晶から錬成してある。
わざわざ十四年式を選んだのは、ワシの好みの問題だ。
外国製の銃も錬成、組み立ては出来るのだがな。
まあ、精霊結晶から錬成し、魔力結晶で錬成した弾丸を撃つこの銃には形状など、あまり意味は無い。
威力や命中精度は、今試射した通りだ。
「しかし……人里に出て行くと成ると、この威力はトラブルの元に成るやもしれん。改良の余地があるな」
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