第171話 輪廻の輪に返れ
「それは、レラジェの矢と申す魔法でな。お前さんには見えんだろうが、その手の甲に、その矢が突き刺さっておる」
「ば、ば、馬鹿な!魔法だと!?」
「ん?どうした、さっきはワシが魔道具なしに、魔法の一つや二つ使ったとしても驚かんと、言っておったでは無いか」
「ふ、ふざけるな!」
そう叫びながら、ヤツは半ば腐れ落ちそうな右手に握られたデリンジャーを、左手で奪う様に持ち替えワシに突き付ける。
だが、遅い!
瞬時に間合いを詰め、その左手を手首の先から切り飛ばす。
「ぐわっ!」
そして、恨みの籠った血走った目をワシに向ける。
「よ、よ、よくも私の両手を……!」
「なに、失った手など気にする必要も無い」
「そ、それは、どう云う……ぐわっ!」
ヤツは崩れる様に右膝を突く。
「レラジェの矢は威力の低い魔法だ。だが負わせた傷口を腐敗させる効果を持つ。確か以前、トロールベアとか申すクマを、そう時を置かず全身を腐らせた。お前さんも、見ての通りだ。既に右半身が腐れ落ちておる」
ドサッ!とヤツの腐敗した右腕が肩から落ちる。
「ファ……ファ……んだ……と…………」
声もろくに出せんか、既に喉の腐敗が始まった様だな。
もう、そう長くは有るまい。
ホバートも、
「ど……どー……ひて……わらひが…………」
フッ、どうしてとな……。
「それは別に、お前さんが悪を成したからでも、実力に劣っておったと言う分けでも無い。単純な事だ……敵に回す相手を間違えたと云う事だ」
うな垂れる様に膝を突くヤツの左に回る。
「だが、お前さんは、まだツイておる方だ。お前さんに置いて行かれた男は、その魂までをも破壊した。死んだとて、その来世も無いやも知れん。それに比べればさほどの事も無い。どのみち人は必ず死を迎えるモノだからな」
一度、軍刀を振って、刀身の血のりを振り払う。
「善悪は別として、お前さんは良くやったよ。まさか、ワシの魔弾を一発防ぐとはな……。まあ、それ故特別だ、このまま腐れながら死んで行くよりは、ワシが介錯してやろう」
軍刀を振り上げ構える。
「輪廻の輪に返れ」
ホバートのうな垂れる首にその
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