第62話 買い手、ゴロツキの集団

「どうやら、納得いかん相手と見受けられるが?」

「ハァ~、あんたの言う通りじゃ。以前からこの町と悶着を起こしとった連中でな。ヘルマス一家いっかと言うんじゃが、随分柄の悪い奴等で、ルパート・ヘルマスと言う男が率いておる。で、この男がまた曲者でな、実業家と自称しておったが、噂では元は何処どこぞのギャング団を率いておったとかなんとか……。儂の爺さんの代から此処ここに移り住んで、不毛の荒野を正に土から作り上げた町じゃ。例え、この町を売るにしろ、あんな奴らの手に渡ると考えると……口惜しいてな」


うむ、何ともきな臭い話だ。

「その悶着とやらを詳しく教えてくれんか?」


「あんた、妙な事をお聞きなさるね」

「いや、オレも知りたい。教えてくれ」

どうやら、ジムもきな臭さを感じ取ったのだろう。


「うむ、そうじゃな……あれは、二年ほど前に成るじゃろか。町の北にある廃坑じゃが、あそこから何ぞ黒い液体が染み出して来おってな。嫌な匂いのする液体じゃ。それがみるみる、その露天掘りの廃坑に溜まって沼みたいなもんに成って、皆も極力あの辺りには寄り付かん様に成ったんじゃ。ところが、それから半年ほどして、何やら柄の悪い連中が、町をうろつく様に成ってな。それも廃坑の方に足しげく通っておったらしい。様子を見に行った者の話じゃ、何やら測量の様な事とかしとったと云う話じゃ。で、オーウェンとアイツんとこの若い者で、奴らに何してるか聞きに行ったんじゃが、まあ、想像付くと思うが喧嘩沙汰に成ってな……」


「じゃあ、悶着ってのは、その喧嘩沙汰の話かい?」

「いやジム、まあ、それも有るんじゃが……。それから、しばらくして、さっき話したルパート・ヘルマスと云う男が儂ん所に尋ねて来てな。それで、廃坑を売ってくれと。まあ、廃坑は町の所有物じゃったが、無駄に放置しとるだけだしの。有効利用できるならそれに越したことは無い。オーウェンら自警団との悶着を起こさんでくれるなら、前向きに検討しても良いと話したんじゃ。そしたらやっこさん、いや、町ごと売ってくれと。しかも、まるで町は廃坑のおまけ見たいな言い方じゃった。それで、頭に来て追い返したんじゃ」


「それで、その後嫌がらせとかは?」

「ああ勿論、町での暴力沙汰はしばらく続く事になった。そして、やっとそんな騒ぎも落ち着いた頃、ゴブリンの襲撃じゃ……」


ジムと目が合う。

どうやら、ジムも不自然にタイミングが重なっている事に感付いたらしい。

この町とエドに降りかかった、数々の不運、それに、さらにゴロツキ共とのイザコザ。

どうやら、話が繋がりそうだ。

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