第132話 魔道具をもう一つ
「さて、急がんと、成るまいな」
何しろ、即席に作ったものだ。
効率を重視して、治癒の権能が発動しっぱなしに成るように錬成して居る。
早く使わんと、魔力結晶の破片は氷の様に溶けてしまう。
灰の中に残る破片もかき集めて、ベッドに横たわるマーサの元へ。
そして、ウェパルの治癒を付与した、その魔力結晶の破片を、額、胸、腹、両手、両足へと乗せてく。
「うむ、これで良い」
暫くもせぬ内に、魔力結晶の破片が自らに秘められた魔力を治癒の魔力に転化し、マーサの体に溶け込む様に吸収される。
程無く、赤黒くはれ上がり
一応、首筋に指を当て脈を取る。
「どうやら、問題無さそうだ」
さて、マーサの事はこれで良しとして、未だやらねば成らん事が山積みだな……。
バーニーの救出、ヘルマス
だが、先ずはその前に、ヤツ等の居場所を見つけ出せねば成らん。
ヤツ等が、バーニーを盾に何ぞリアクションを起こしてからでは遅いからな。
これ以上、後手に回る分けには行かん。
幸い、この部屋には眠ったマーサしか居らん。
今の内にもう一つ、魔道具を錬成しておくか。
人前で魔法陣を
何しろ、あれ程の壁を錬成して、魔道具と言う事で、誤魔化せておるのだからな。
まあ、オーウェンは少々
先ほどと同様、羊皮紙を錬成し、今度は右手の中指の指先を傷つけて、魔法陣を描き、その中央に魔力結晶を置いて魔力を流す。
魔力結晶は白く輝き、小さな黒曜石の髑髏へと姿を変え、役目を終えた魔法陣は灰に成る。
「うむ、こんなモノで良かろう」
錬成した髑髏の直径は、十ドル金貨程も無い。
髑髏の形を象ったのは、まあ、只のハッタリだが、付与した権能は、その見掛けに違わず非道なモノ。
だが、これもまた即席の魔道具、一度しか使えん。
仮にその権能を発動させずに、一晩も経てば、形を保てなく成って、魔力の粒子と成って霧散する。
まあ、どうせ、恐らくこの後直ぐに使うモノだからな、これで良い。
ともかく、これで、人前でこの権能を使っても怪しまれる事はあるまい。
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